パテック フィリップ 25年ぶり話題の新作「キュビタス」を徹底解説! 特許6件を出願したムーブメント搭載で価格は1399万円
ティエリー・スターン社長念願のスクエア型
1997年の「アクアノート」、1999年の「Twenty~4」以来の、待望のニュー・コレクションがヴェールを脱いだ。その名は「Cubitus(キュビタス)」。エレガントでスリムなスクエア型ケースを持つ画期的なタイムピース3モデルの詳細を、ドイツ・ミュンヘンでのイベントやインタビュー取材の成果を交えつつ報告する。 【写真16枚】新作のキュビタスは3モデル。ケース厚は5822が9.6mm、5821が8.3mmと見た目も薄く、装着感が抜群 ◆若い世代のためのデザイン これほど世界中の耳目を集める新作腕時計発表も珍しいだろう。ネット上で乱れ飛ぶウワサや未確認情報をいっさい遮断し、ドイツ・ミュンヘンで対面したパテック フィリップの「Cubitus」。 角が丸みを帯びた独自性あふれるフォルムのスクエア型ケースに、水平エンボス・パターンの文字盤を組み合わせたタイムピースを見て、触れて、身に着けて、私は新コレクションの成功を確信した。新たな顧客層=若い世代をも意識しての《カジュアル・エレガンス》が美事に表現された、とても魅力的な時計に仕上がっていたからである。 ◆独創的なスクエア・ケース コレクションの嚆矢として発表されたのは大型日付、曜日、ムーンフェイズ表示機能を持つプラチナケースの「5822」と、シンプルな三針の「5821」(ステンレススティールとローズゴールドの2トーンケースと、ステンレススティールケース)の計3モデルだ。 アール・デコの時代以降、角形ケースの腕時計はあまたあるが、「Cubitus」は、他の何物にも似ていない革新的なデザインを纏って登場した。まず目を惹くのがベゼル。その正方形は丸みを帯びた角を備えており、正方形・円・八角形を組み合わせた斬新かつデリケートなフォルムだ。どこかエレガンスをも感じさせる。 ケースは、ムーブメントを上面から入れることのできる二体構造(ケースバックと一体の本体/ベゼル部分)になっている。そして、ケース本体の両側(上下)にあるストラップまたはブレスレットとの結合部との融合により、オリジナリティと存在感のある意匠となった。 この独創的デザインは、縦サテン仕上げによるベゼル表面/ケース上面、およびポリッシュ仕上げによる面取りカットされたベゼル側面/ケース本体側面が生み出す優美なコントラストによって、さらに強調されている。 特筆すべきは装着感の良さ。ケース直径は45mmあるが、ケース厚は5822が9.6mm、5821が8.3mmなので、手首の細い私でも腕なじみがとてもよい。ケースサイド=ミドルケースが大きく絞られていることも、装着感と見た目の薄さの向上に寄与している。 ◆水平エンボス・パターン 「Cubitus」コレクションの個性を強調し、そのスポーティな雰囲気を強化するために、文字盤には美しい光の戯れを生み出す水平エンボス・パターンを施している。カラーはソレイユ仕上げのブルーおよびオリーブグリーンで、色のグラデーションは採用せずに明るく若々しいイメージを醸し出す。 水平エンボス装飾は、「Cubitus」に搭載されている自社製ムーブメントの偏心マイクロローター(5822)や、自動巻き中央ローター(5821)にも施される。また、これらにはマニュファクチュールパテックフィリップのエンブレムであるカラトラバ十字も刻まれている。 5821に装着されているブレスレットは、両側リンクの縦サテン仕上げと中央リンクのポリッシュ仕上げによる艶消しと光沢のコントラストがケース同様に際立つ。仕上げは、ケースとブレスレットごとにそれぞれ約55回の手作業工程を必要とし、パテック フィリップならではの精緻な仕上がりを見せる。完成度を追究するために細部まで抜かりはない。 ◆6件の特許出願ムーブメント フラッグシップであるプラチナケースの5822のために、パテック フィリップは瞬時送り式大型日付、曜日、ムーンフェイズの各表示機能を持つ新型自動巻ムーブメントを開発した。 この複雑な新しい心臓の開発に伴い、さまざまな表示とそれらが同時・瞬時に“18mm/秒”でジャンプする際のエネルギー管理などに関連する特定分野の合計6件の技術特許出願が行われた。これらの技術革新により、大型日付表示数字を含むすべての表示の修正が1日のどの時刻でもできるようになっている。 高級時計メゾンにとって、新作は美しいタイムピースに対する独自のビジョンを表現する好機。カジュアル・エレガンスを体現する「Cubitus」のターゲットは、従来のパテック フィリップの顧客よりは少し若い世代である。 《希少なハンドクラフト》で伝統工芸技術の保護と革新に取り組みつつ、185年の歴史を含む多くの源泉からインスピレーションを得て、幅広い年齢層の顧客の好みに対応し創造力と創造性を存分に発揮する。そんな同社の姿勢に、畏敬の念を覚えずにはいられなかった。 文=数藤 健 写真=パテック フィリップ (ENGINE2025年1月号)
ENGINE編集部
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