WEST.が見せるボーカル表現の真骨頂 meiyo、syudou、ハニワ……ネットシーンクリエイターの提供曲から紐解く
どんな曲でも“WEST.の色”を表現できる音楽的ポテンシャル
こういった流れの中でポイントになるのは、やはりアイドルソングのような楽曲を歌いこなす一方で、高速チューンも歌いこなしているWEST.の存在感だ。今回紹介した楽曲の多くは作品としての個性が強いぶん、本来は自身のボーカルの存在感を発揮して歌いこなすのが難しいはず。それにもかかわらず、WEST.はどんな楽曲においても、“WEST.の色”を出しながら、高いレベルで歌いこなしてみせるのだ。たとえば、桐山照史は力強くてパワフルな歌が持ち味で、伸びやかな歌声で楽曲の軸を作り上げているし、神山智洋は澄み切った歌声を武器にしながら幅広い歌唱法で楽曲に彩りを与えている。重岡大毅のように声の中に宿る表情が豊かな歌い手もいて、歌そのものの上手さで魅了する者もいれば、表現力の豊かさが魅力的なメンバーもいるのがWEST.の豊かさだろう。あるいは、歌で切り取ってみても、ハイトーンが綺麗な人もいれば、低音の切れ味が素晴らしい人もいるし、そこにプラスして、パートによってはツインになったり、ユニゾンで力強い歌唱を披露することもできる。多様なアプローチも込みで、WEST.はどんな歌も歌いきっている印象がある。 だからこそ、ロックチューンもボカロソングのイズムを感じさせる楽曲も、WEST.らしい装いの歌として感じられるのだ。今回、ネットシーンで話題を集めた楽曲、という切り口で考察しても、よりその魅力はダイレクトに浮き彫りになった。デビュー10周年を経て、WEST.のアーティストとしての魅力が、より進化と深化を遂げている。そのように感じるのである。
ロッキン・ライフの中の人