12月の歌舞伎座は『あらしのよるに』『天守物語』など人気作が勢揃い
團子が初めて図書之助に挑む『天守物語』
続く第二部の『加賀鳶』は、江戸の香りをたっぷりと味わえる良作。憎々しさとおかしみをたたえた道玄の悪役ぶりを、こちらも松緑が巧みに表現。当時の憧れの的「加賀鳶」の松蔵は中村勘九郎で、水も滴るようないい男ぶり。舞踊『鷺娘』は中村七之助が人間の男との恋に思い悩む鷺の精に扮し、切ない女心から恋の妄執までを踊り分ける。 第三部は、十七世中村勘三郎に書き下ろされたという舞踊『舞鶴雪月花』から。勘九郎が桜の精、松虫、雪達磨を次々に踊る。松虫には次男の中村長三郎も参加。おかしくも切ない幕切れに注目だ。 最後の『天守物語』は、坂東玉三郎が主人公の富姫を演じながら演出を練り上げてきた名作。姫路の白鷺城・天守閣の妖(あやかし)の世界に足を踏み入れ、富姫に魅了される人間の姫川図書之助に、市川團子が初めて挑む。この世ならぬ美しさを醸し出す玉三郎と、次世代のスターとしてきらめきを放ちつつ、二十歳らしい瑞々しさを残す團子。今だけの組合せを見逃す手はないだろう。 取材・文:藤野さくら 写真提供:松竹 <公演情報> 十二月大歌舞伎 公演期間:2024年12月3日(火)~26日(木) 会場:歌舞伎座 ※無断転載禁止