領収書の売り買い、現金手渡し徹底、ありとあらゆる方法を駆使して……歌舞伎町の「脱税事情」
歌舞伎町の事件がニュースになり、しばしば話題になるなかで議論として上がるのが納税問題。 「3日間で100万円」急増中!海外出稼ぎパパ活アテンダーの戦慄手口【写真】 ″頂き女子″りりちゃんが2年間で約4000万円の脱税を行っていたとして追起訴されたが、歌舞伎町の人間は納税をどう考えているのだろうか。 「いや、振り込みは足つきますよ……」 パパ活と風俗を掛け持ちしているアユ(仮名・21)は、納税をしていない。 「大学生になりたての頃、バイトしたいけど103万円を超えるなって親に言われてて。どうしよーって思ってたら友達にガールズバーのバイトに誘われたんです。手渡しだから大丈夫って。 で、ガルバで同僚からホストに誘われてあっという間にハマって。毎月100万以上は稼いでますけど、全部使ってます。パパ活も振り込みがあるとなんか足がつきそうだし、絶対手渡しにしてもらっていますよ」 水商売業界に対する国税局の目は、どんどん厳しくなっている。数年前には大手ギャラ飲みアプリの運営会社に国税局の調査が入り、働いているキャストの女性たちが追徴課税に追われる事態が発生した。 なかには1000万円以上の追徴金を請求された女性もいたという。昨年、国税のメスが入ったのが、大手ホストグループAだ。売れっ子たちにも同じように、数千万円単位の追徴金が発生した。 「ホストって売り上げランキングあるし、『1000万over』みたいな数字があるから誤魔化せないだろ、と思うかもしれない。でも実際は『売り掛けを飛ばれたので実際の収入にはなってない』って言ってうまいことかわしたりしてたんですよ。ただそれも売り掛け文化があったからこそなんで、今後はどうなるんですかね……」(マサト・仮名・23) 売り掛け文化の恩恵として、ホスト側が売り上げ申告を誤魔化せたり、客側が「売り掛けで使った日」と「お金を持ってきた日」で領収書の日付をずらせるといった利点も存在した。しかし売り掛けが廃止され、カード払いが主流にでもなれば、このからくりは機能しない。 「領収書が必要な女の子に、領収書がいらない他の女の子の使った金額分の領収書をあげたりしてたんですけど。その辺も締め付けが厳しくなってますね。売れていて権力あるホストなら、ある程度自由にできると思いますけど」(同前) ホストたちも個人事業主として確定申告をしている人もいれば、法人化している人もいる。客と外で会う時の金銭は原則ホスト側が負担するため、飲食店では彼らが領収書をもらうことが多い。領収書を求めないホストは、脱税している可能性も高いという。 「以前、お客さんの前で飲食店の領収書をもらったら『ひどい! 私との食事は仕事なんだ。経費で落とすんだ。ケチくさい。最低!』ってブチギレられたことがあったんですよ。 いや、お前は納税をしたこともなければ社会を知らないだけかもしれないけど、会食とか接待での領収書は基本だし、むしろ領収書をもらう経済観念がきっちりしているホストとして好感度上げてくれよ、ってその時は思いましたね」(同前) 筆者はこの話を聞いてから、「そうか、じゃあ私の指名しているホストはあまり売れてないけど領収書をもらってちゃんと申告しているんだな」と思っていたが、実際は納税はおろか売れている先輩に領収書を売り捌き、小遣い稼ぎをしていたことが判明した。 カネが湯水のように使われる歌舞伎町で、今必要なのは税金の勉強なのかもしれない。 『FRIDAY』2024年3月22日号より 取材・文:佐々木チワワ ’00年、東京生まれ。小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。大学では繁華街の社会学を研究。本連載をまとめた新刊『ホスト!立ちんぼ!トー横!オーバードーズな人たち』(講談社)が好評発売中
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