「“反対されるもの”にしか興味がない」賀来賢人が俳優・作り手として見据えるビジョン
俳優がゼロから関わるのはすごく健全なこと
──しかしキャストの豪華さにびっくりしました。唐沢寿明さん、佐藤浩市さん、加藤雅也さん……今なかなか映画でもこの方達の共演は見れないぞ? という顔ぶれですよね。現場はどういう雰囲気だったのでしょう? 凄いですよね(笑)。でも僕の印象では、ベテランの方々が楽しんでいたような気がしましたね。皆さんが生き生きと演じている姿にワクワクして。そこに河合優実ちゃんや中山ひなのちゃんたちフレッシュな俳優陣が、必死に監督の武さんに食らいついている。そんな感じがまた良かったです。 ──確かにそう考えたら、竹内さんと賀来さんという物語の主軸の2人がちょうど世代的にも真ん中なんですね。 そうなんです。ほどよくキャリアも積んでいて、でも僕は僕で自分のことで精一杯だった部分もあるんですけど(笑)、すごくバランスが取れたチームだったように思いますね。 ──先程の竹内さんと「ウマがあった」理由でもあると思うんですが、賀来さんもNetflixオリジナルドラマ『忍びの家 House of Ninjas』では原案を担当したり、自ら作り手として作品に関わる動きをスタートされていますよね。なかなか周りにはそういう能動的な動き方をされている人は少ない、という状況ですか? いや、いるはいますよ? たとえば僕も出演していたドラマ『錦糸町パラダイス』(テレビ東京)における柄本時生だったり。少しずつですけど、俳優が作り手に回るという形が今後もっと普通にはなってくると思うんです。ただそこで怖いなと思うのが、“作る”ということに関して俳優は基本的に素人なんですよ。だから誰か一人が無茶をやってしまったり、きちんとできないケースが出ると「やっぱりやめさせよう」っていう空気が出てしまうと思うんです。僕たち俳優側も、やるからには責任を持ってやらなくてはいけない、そこを自覚しないといけないなと思っています。でも、基本的にはこの「俳優が作品づくりにゼロから関わる」というのは、すごく健全なことだと思うんですよね。海外だと当たり前ですし、作品の幅も広がらないですから。 ──作品づくりに関わった経験から、今回の作品でも現場の見方が以前よりは変わったりしましたか? いや、今回のように純粋に“俳優”として関わるときには、そこは割り切ってます。ただ、今自分がやっていることの裏には多くの人の色んな思いがあるんだろうな、というのは以前よりも感じるようになったかも。あと、監督のやりたいことをなるべく尊重しようという思いも強くなったかもしれないですね。どういう画を作りたいかとか、これまでは現場で「そうじゃないんじゃないの?」と思ってしまうこともあり。でも『忍びの家』を経験してからは、一回監督の意見を聞いて、それをどう具現化したらいいか、まずやってみよう。そう考えられるようになった気がします。 ──実際に自分たちでアイデアを企画にし、それを作品にしていくというのはすごく長い年月と労力がかかる話ですよね。俳優として活動しながらそういう動きもされることは大変ではないですか? 「自分もそういうことをやりたい」という人は多くて、結構相談は受けるんです。けど、みんな忙しすぎて諦めちゃうんですよ、「無理だわ」って。だからその根気がある人だけができるんだな、というのは実感します。僕も今も企画を動かしていますけど、ただただ根気がないとできない(笑)。 ──途中でいろんな事情からダメになることもありますよね? というか、ほぼダメになっちゃいます。特にこういう大きな作品は本当にいろいろな人が関わっているから、なかなか企画が通らない。お金を出す人たちも、成功するかどうかわからない、担保もないものにお金を出すのはリスクですしね。だからこそ実現させるためには相当根気がないといけないんですけど……みんな途中で心が折れちゃう(笑)。僕の場合はありがたいことに、一度それができてしまったので、なんとなく「やり方」みたいなものが見えている立場です。だからこそ以前よりはスムーズにそういうことができるし、それを色んな人に共有しているのが現状ですね。