【国際女性デー】SHELLYさん「セックスは愛し合う二人がするもの?」性教育について発信する理由を聞いた
【もしかしたら、あなたの大切な人も傷ついているかもしれない】 ──2023年7月13日に施行された改正刑法では、同意のない性的行為を処罰の対象とする「不同意性交等罪」と「不同意わいせつ罪」が設けられ、性交同意年齢が13歳から16歳へと引き上げられました。しかも、刑法の改正は1907年の制定以来初めてのことなんですね…。 SHELLYさん: 時代も社会も変わっているのに、法律は116年も変わらなかったなんてぞっとしますよね。改正前の法律では、裁判で自分が同意していなかったことや相手に「やめて」と言った事実が認められているのに、加害者は無罪という判決が何度もありました。法律が改正されて、同意のない性行為が処罰の対象になったことは本当によかったと思うけれど、正直まだまだ足りません。 ──もし当事者になったときに勇気を出して声をあげたとしても、「あなたも悪かったんじゃない?」という性的二次被害(セカンドレイプ)に遭ってしまうことも少なくありません。 SHELLYさん: そうなんです。「お酒は飲んでいたの?」や「でも、わかっていて行ったんだよね」など、被害者をさらに傷つける人が本当に多くて。ただ、今は「それはセカンドレイプだ」って指摘する人も増えていて、法律が改正されたことの大きな影響を感じます。 でもね、ニュースに出ている人たちが「でも何が起きたか本当のことはわからない」「密室で起きたことですから」とコメントしている状況で、「実は私も被害を受けて…」なんて言えるわけがないじゃないですか。 ──「自分もあんなふうに言われてしまうかもしれない」と思ったら、怖くて言えないと思います。 SHELLYさん: 「性犯罪は絶対によくない」「被害者を守らなきゃいけない。ましてや傷つけるようなことは絶対に言っちゃダメ」っていう空気にならない限り、警察はもちろん友達や家族、同僚…誰にも言えないですよね。 だから、もしかしたらこれを読んでいるあなたの大切な人も、被害に遭って傷ついているかもしれない。被害に遭ったことを言えない、言ったら叩かれるという今の状況は、「性被害に遭った人のことは守りませんよ」という日本社会からのメッセージだと思っています。 【女性が社会から植えつけられてきた「襲われること」への恐怖】 ──社会を変えていくには、正しく知ることはもちろん、想像する力も必要ですね。 SHELLYさん: 想像力って本当に大事。私もこの間、パートナーと話していてハッとしたことがあって。「夜にイヤホンで音楽聴きながらランニングしたら気持ちよさそうだよね」っていう彼の言葉に「そんなことできるか!」って返したら、「何で?」って聞かれたんですよ。 パートナーは私が発信していることにめちゃくちゃ理解があるし、感覚もフラットな人。でも、「夜に一人で外にいるとき、女性はレイプされるかも…って心配しちゃうんだよ」って話をしたら「またまた~嘘でしょ」って。こんなに意識の差があるのかと衝撃を受けました。 夜、静かな道を一人で歩いているときに「今、襲われたらどうしよう」って思ったこと、ありませんか? 暗い道を歩くときに誰かと電話しているふりをしたり、鍵を指の間に挟んで歩いたり。きっとみんな一度は経験したことがあるんじゃないかな。 ──暗がりで人影や車が近づいてきたときもドキッとします。 SHELLYさん: 人気のない場所や夜道を歩くことが何となく怖いのは、女性の場合とくに襲われることへの恐怖があるからだと思います。なぜなら、女性は幼い頃から「肌が出る服を着るんじゃないよ」「飲みすぎるんじゃないよ」「夜に出歩くんじゃないよ」「そういうことしてると襲われるよ」って刷り込まれてきているから。 「男女」という分け方で話すのは好きじゃないけれど、これは社会的な刷り込みの話だからあえて「男女」を使いますね。今の社会は、女性には恐怖を植えつけ、刷り込むのに、男性には「女性を襲っちゃダメだよ」って日常的に言ったりしませんよね。ただ、だからといって、加害者にならないための教育を男性だけにすればいいかというと、それは違うんですよ。加害者にならないための性教育を“全員に”すればいいだけの話です。 本来、社会に必要なのは被害者にならないための教育じゃなくて、加害者にならないための教育。「積極的な同意がなければ触れてはいけない」ということを、性自認を問わず全員が知っていれば、性的同意を無視する人=やばい人っていう共通認識が生まれますから。