【国際女性デー】SHELLYさん「セックスは愛し合う二人がするもの?」性教育について発信する理由を聞いた
【「SHELLYのお風呂場」を、安全な場所として守っていきたい】 ──まさに、人と関わる上での大前提となる性教育ですね。性被害が年齢や性別を問わず起きてしまうことを考えると、誰もが知っておくべきことだと思います。これまでの発信を通じて、SHELLYさんのもとには多くの声が寄せられていると思いますが、ぜひうれしかったエピソードも聞かせていただけますか。 SHELLYさん: うれしかった話はたくさんあります! YouTubeチャンネルの1回目で「緊急避妊薬(アフターピル)」の話を公開したら、数日後に高校生からDMが届いたんです。彼とセックスをしたときにコンドームが取れてしまって、パニックになりながら「緊急避妊薬」を調べたら私の動画に出合ったそうです。 「週末で、緊急避妊薬を手に入れられる場所が家から車で1時間かかる場所だったので、二人で相談をしてお互いの親に話をしました。そして彼のお母さんに運転してもらって、彼とお金を出し合って何とかたどり着くことができました。お互いの親にも、『これからはもう少し気をつける』って話せました」と書かれていて。私がやりたいのはこういうこと!って本当にうれしかったです。 ──カップルの関係性も素敵ですし、まさに知ることの重要性を体現したエピソードですね。 SHELLYさん: どんなに気をつけていてもアクシデントは起きるんです。そのときに緊急避妊薬を知らなくて予期せぬ妊娠につながったら、中絶するか、高校生で母親になるか、出産した子を養子縁組に出すか…という選択肢から決めなきゃいけない。もし本人がそのタイミングでの妊娠・出産を望んでいない場合、どれを選んだとしても、大きな悲しみや苦しみを背負ったり、自分を責めたりしてしまうかもしれません。 そんな限られた選択をさせるのか、「万が一のためにこういう薬があるよ」ときちんと伝えて、その薬を手に入れられる世の中にするのか。それによって女性たちの生き方がまったく変わるんです。 他にも、「性的同意の回を彼と見て、改めて話し合うきっかけができてよかったです」っていう声をいただいたり。コメント欄も本当にみんなあったかくて。よく「ここは安全な場だよね」って話すし、その場所を守りたいなと思っています。 【社会を変えるのは、当事者じゃなく多数派の役割】 ──YouTubeチャンネルでは「いつでも相談してほしい」と繰り返し口にされていて、テーマに合わせてさまざまな相談窓口の情報も出されていますよね。本当に情報を必要としている人にとって、SHELLYさんの真摯さは何よりの安心感につながると思います。 SHELLYさん: もしそんなふうに思ってもらえていたらうれしいです。もうひとつ、想像力につながる話をすると、日本に多い名字TOP10の人数って、日本の人口の1割ぐらいにあたるそうです。それって、LGBTQ+のコミュニティの割合と大体同じ。(※) 知り合いに佐藤さんや鈴木さん、高橋さんが一人もいませんって人はたぶんいないじゃないですか。それなのに、「LGBTQ+の人はまわりにいない」って言い切れちゃう。これは、LGBTQ+に限らず、日本で何かしらの少数者でいることの生きづらさを表していると思うんですよね。 ──いないのではなく、言えない社会だから見えにくいだけなのに、性被害もLGBTQ+もなぜか当事者がいないことにされてしまう。自分が「見えていない」という自覚も必要ですね。 SHELLYさん: そうですね。少なくとも自分には「言えない」と思われているということ。実は私もあまり言われないけれど、それは自分の責任だと思っているし、社会を変えるのは少数派の当事者じゃなくて多数派の役割だと考えています。 だって、多数派のためにつくられた世の中なんだから、多数派の人が生きやすいのは当然ですよね。多数派の人が、そうではない人たちへの想像力を持つことは人間力としても必要だし、むしろ今までそういうことを想像せずにいられたとしたら、それは反省したほうがいいんじゃないかなって私は思います。 女性にまつわる問題は男性が、LGBTQ+の人たちに立ちはだかる問題はシスジェンダー(生まれたときに割り当てられた性別と性自認が一致している人)かつ異性愛者の人が、障害を持つ人の問題は、障害を持たない人たちが戦わなきゃいけないことだと思っています。 ※明治安田生命「全国同姓調査」(2018)、LGBT総合研究所「LGBT意識行動調査2019」、電通グループ「LGBTQ+調査2023」より (インタビュー後編に続く) SHELLY 1984年生まれ、神奈川県出身。14歳でモデルとしてデビュー後、タレント、MCとして幅広く活躍。YouTubeチャンネル「SHELLYのお風呂場」やDMMオンラインサロン「SHELLY家族ラボ」などを通じて性教育や家族、コミュニケーションにまつわる発信を積極的に行っている。8歳・6歳・1歳の娘の母。 ジャケット¥30,900・ワンピース¥28,900・中に着たワンピース¥17,900/Desigual(デシグアル 東京 銀座中央通り)、ピアス¥22,000・ネックレス¥20,900・リング¥16,500/ADER.bijoux(ADER.bijoux showroom)、サンダル¥30,800/CAMPER(カンペールジャパン) 撮影/花盛友里 ヘア&メイク/高橋純子 画像デザイン/坪本瑞希、前原悠花 スタイリスト/野田さやか 構成・取材・文/国分美由紀