人間より快適?「クルマ任せ」ではない自動運転の未来
電動パワステで可能になったこと
この10年ほどで油圧式のパワーステアリングはほぼ無くなった。油圧式の場合、前輪タイヤの向きを変えるための動力源としてエンジンでポンプを駆動して油圧を作っている。このパワステポンプはエンジンがかかっている限り圧力を作っているのでその駆動分だけ常時ロスが出る。ステアリングを切っている時もそうじゃない時もお構いなしにパワーが食われるわけだ。 燃費戦争の最中でそれは看過できないロスだ。そこで現れたのが電動パワステだ。電動パワステは油圧ではなく、モーターの力でアシストを行う。必要な時だけ電流を流せばいいので、当然アシストの要らない時はエネルギーをロスしない。 しかし本当のところ電動パワステは、自動車メーカーにとって生産時のコストダウン効果の方が意味が大きい。油圧式だと生産ラインで高圧がかかるホースを確実に接続して、油を入れるという面倒な作業が必要だ。油圧回路に気泡が噛まないようにすることも含めて組み立てにとても手間がかかる。電動式パワステなら部品メーカーからアッセンブル済みのユニットとして供給され、ユニットをねじ留めしてケーブルソケットを挿すだけで済む。油圧よりはるかに楽なのだ。イコール生産コストが下がるということになる。こうして電動パワステは油圧式を駆逐した。 この電動パワステは、人が操作しなくても電気さえ供給してやれば、前輪の向きを変えられる。つまりカメラシステムでレーンを読み取り、レーンを逸脱しようとした時は電動パワステに電気を流すことでアクティブに前輪を動かして補正を掛けることが可能だ。こうしてレーンをキープする装置ができあがる。つまりレーンキープシステムは、本来衝突軽減ブレーキ用に装備されたカメラユニットと同じくパワステのために装備されたモーターを組み合わせて電子制御することで成立しているのだ。
「走る、曲がる、止まる」の自動化
加速、減速、停止、ステアリング操作。これら全てができることによって、エンジニアリング的には自動運転は相当なところまで出来るようになった。 しかし、問題はここからだ。クルマの自立制御とドライバーの運転の関係性を整理しないと、とても危険なものになるのは誰にでも想像できる。例えば、ドライバーの操作を受け付けずにクルマが勝手に加速するとか、向きを変えるということがあってはならない。常にドライバーの操作を優先させる制御構築になっている必要がある。 もう一点、クルマの自立制御に依存して、ドライバーが運転や周囲への監視を放棄することがあってはならない。その実際の操作方法と制御はどうなっているかをボルボV40で検証してみる。