「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
<強制だからおもしろいとは?>
<他人に命令されたくなければ、自分に命令されたらよい> ただ、ここが大人になってからの〈勉強〉の、もっともおもしろいところですが、大人の〈勉強〉は、ほかの大人や世間から強制されたものではない。強制するのは、自分なんです。自分が自分に命じている。おまえは変わる必要がある。おまえにはまだ伸びしろがある。まだいける。成長途中だ。おれは、こんなもんじゃない。 そうやって、自分が自分に命じているからこそ、いい大人になってまで、小難しい本を、ときには外国語で、辞書を引き引き、数学だったらノートに数式や図を書き写して、定規やコンパスも使って、〈勉強〉している。他者が命令するのではない。自分が自分に命令する。 Dem wird befohlen, der sich nicht selber gehorchen kann. 自己に服従しえざる者は他者によって命令せらるる (ニーチェ『ツァラトストラかく語りき』) わたしは、学校と名のつくものは、どれもこれも大嫌いでした。小学校も中学校も、思い出すとおなかが痛くなるくらい嫌いだった。勉強が嫌い、だったわけではどうやらない。命令されていたからです。他者に命令されるのが、わたしはほとほと嫌いなんです。 他者に命令されるのが嫌いな人は、自分で自分に命令するしかない。ニーチェの書いたとおりです。 <〈勉強〉している人がかっこいいのは変わり続けるから> そして、〈勉強〉している人は、かっこいいとも思う。ライターだけではありません。ミュージシャンだって画家だって、アスリートも、人の気持ちをうつことができるのは、〈勉強〉している人です。自分を、変えている人です。転がる石。 史上最長寿のロックバンド、ローリング・ストーンズは文字通りの転がる石です。黒人音楽のR&B好きでキュートなルックスの五人組が、女の子にキャーキャー言われてデビューして、変化しなかったらそこで終わります。そんなバンドは掃いて捨てるほどある。今後も出る。 彼らはそこで変わった。ブルースなどアメリカ黒人音楽を、勉強し直した。カントリー/ウエスタンの白人伝統音楽も探究した。七〇年代初頭の奇跡の名作群は、そうした彼らの研究によってできあがったものです。 どんなに売れても、成功しても、〈勉強〉をやめなかった。レゲエを学んだ。いまはディスコがはやってる? じゃあディスコミュージックだ。若いやつはパンクだと? パンクのビートってどんなだ。どんどん吸収して、自分たちを変えていった。二〇二三年に出た新作は、配信音楽を深く研究しています。