RAG普及で加速する製造業のナレッジ活用 技術継承への貢献にも期待
RAG(Retrieval Augmented Generation:検索拡張生成)を社内で活用する企業が増えている。エクサウィザーズが2024年12月に公開したレポートによれば、同社セミナー参加者の内、「RAGを業務で活用している」と回答した企業は22.1%に上った。同年5月に実施した調査では4.0%であったことから、短期間で大幅にRAG活用が進んでいる様子がうかがえる。 RAGの検討や取り組み状況について[クリックして拡大] 出所:エクサウィザーズの調査レポートより引用 製造業に限って見ても、試験的な導入を超えてRAG活用を本格化させようとする動きは非常に活発化している。これは、生成AIの効果的な活用を推進する上で、社内に蓄積されたデータやナレッジの活用が極めて重要だと多くの企業が気付き、すでにアクションを起こしていることの表れであろう。 RAG以外にも生成AIの回答精度を高める新規技術が登場している。その意味で、今後もRAGが生成AI活用に欠かせない強力なツールであり続けられるのかまで見通すのは難しい。ただ、2025年については、生成AIで自社のナレッジを活用するための有力な選択肢として、RAGに取り組む企業がさらに増えていくのではないか。 本記事では製造業におけるRAGの取り組みや、さらなる適用が期待される分野、普及に際して課題となるポイントをざっと見ていこう。
過去のプロジェクト事例や資料検索で活用
まず、製造業では具体的にどのようにRAGが活用されているのかを紹介しよう。例えば、中外製薬では自社開発した社内AIアシスタント「Chugai AI Assistant」にRAGを適用させる形で運用している。過去のプロジェクト事例や資料検索を行うなどの形で活用しているようだ。 AGCも2024年8月、すでに全社導入していた「ChatAGC」に新機能を追加する形でRAGを導入した。ユーザーは設定された自身の権限の範囲で、社内データに基づく回答を得ることができる。具体的には、過去の開発や設計に関する技術情報や、製造時の過去のトラブル情報などを参照できる。また、パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)も事業部門から上がってきたテーマの解決に向けて、RAGの環境構築とその試行を進めているとしている。