なぜ久保建英のパリ五輪出場にレアル・ソシエダはオフシーズンにもかかわらず難色を示すのか?
今シーズンは残り5試合。26日のアトレテコ・マドリード戦で最終節を終えるとそのまま日本へ向かい、29日に国立競技場で組まれている東京ヴェルディとの国際親善試合に臨む。6月3日から11日は国際Aマッチデー期間となり、森保ジャパンはアジア2次予選の最後の2試合が、大岩ジャパンは海外遠征が予定されている。 もっとも、肝心の久保自身はパリ五輪をどのようにとらえているのか。 20歳で臨んだ前回の東京五輪。銅メダルをかけた3位決定戦で、グループリーグで勝利していたメキシコに完敗を喫した直後に、久保は埼玉スタジアムのピッチで人目もはばからずに号泣。フラッシュインタビューでは震える声でこんな言葉を残した。 「いままでサッカーをやってきて、こんなに悔しいことはない」 森保ジャパンが快進撃を演じながら、PK戦の末に悲願のベスト8進出を逃したカタールW杯。クロアチア代表との決勝トーナメント1回戦を発熱で欠場した久保は、自分自身への不甲斐なさに東京五輪で喫した悔しさも蘇らせながら、2001年6月生まれで出場資格を持つパリ五輪で、まずはリベンジしたいと誓いを立てた。 「自分はオーバーエイジでもないし、日本が出るならチャンスはある。実現するのであれば全力で臨みたい。(クラブの許可は)自分の実力次第だし、交渉すればいい話なので」 当時の熱い思いがいまも脈打っているとすれば、U-23代表の大岩監督が「久保はパリ五輪出場を望んでいる。あとはクラブ次第」とした『MUNDO DEPORTIVO』の記事もうなずける。同メディアは記事の最後を、次のように締めている。 「ラ・レアルの情報筋がわれわれに語ったところによると、実際に久保が招集され、パリ五輪への出場を望む場合、クラブ側は選手と話し合い、合意に達するように努力する方針だという。(シーズンの途中で離脱した)アジアカップまでの数週間と同じく、久保は同胞のためのプレーと、ラ・レアルのニーズに応える2つの仕事に苦しんでいく」 記事の流れで言えば、合意とはパリ五輪を断念させるための説得と受け取れる。2016年のリオ五輪では代表メンバーに選出されていたFW久保裕也が、当時所属していたヤングボーイズ側の意向で開幕直前に出場を辞退した例もある。選手と所属クラブとの間で乖離するケースが目立つ、五輪を巡る価値観の違いに久保も巻き込まれようとしている。