「戦闘機よりいいもの提供するから戦闘機はお預け」スウェーデンの真意は? ウクライナめぐる“空の争奪戦”勃発か
もう一つの「空の戦い」 スウェーデンもフランスも狙っている?
ウクライナ空軍司令部のセルヒー・ホルブツォウ航空部長は2022年に、戦線の一区域でウクライナ側が航空優勢を確保するには、F-16戦闘機の作戦飛行隊が4個必要だとの認識を示しています。 85機という機数は4個飛行隊を十分充足できますが、4か国から供与されたF-16はいずれも1980年代前半に製造された機体のため、それほど長期間運用できるとは考えられないですし、実戦環境で運用されるため、戦闘や事故による損耗も視野に入れなければなりません。 老朽化した機体や戦闘により損耗した機体は、程度の良い中古機のF-16か、新造機のF-16で更新するのが合理的なのですが、新造機の製造能力を持ち、また程度の良い中古の供給能力も備えるのがアメリカです。しかしアメリカは、ロシアとのエスカレーションを避けるため、ウクライナからの再三再四の求めにもかかわらずF-16の直接供与を拒否しており、ウクライナがこれ以上F-16を入手するのは困難と言えます。 ロシアとの戦いがいつまで続くのかはわかりませんが、長い目で見ればウクライナがF-16を後継する戦闘機を必要とすることは明白で、スウェーデンはグリぺンの早期供与ではなく、「ポストF-16」の座に狙いを替えたのかもしれません。 なお。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は6月7日、ウクライナに対してダッソー「ミラージュ2000」戦闘機を供与する方針を明らかにしています。 ミラージュ2000の供与には、ウクライナへ「ポストF-16」としてラファール、さらにはドイツ、スペインと共同開発計画を進めている新戦闘機「FCAS」を売り込みたいというフランスの思惑が垣間見えます。ここから、もう一つの空の戦い、すなわちポストF-16の座をめぐる戦いは、もう始まっているとの見方ができます。
竹内 修(軍事ジャーナリスト)