教育ライターの中学受験伴走記③「受験を勧めるかと言われれば、正直...」わが子の受験を終えて感じたことを告白
小説『天現寺ウォーズ』を書き、その取材を通じて「中学受験沼」の深さを知っていたはずの筆者。 しかし実際に息子の受験に伴走してみると、それは予想以上にハードで、自問自答の日々でした。
働く母のドタバタ伴走
内心ではいろいろ悩む母でしたが、息子がついに6年生になると、立ち止まっている暇もありません。 去年の夏期講習のことを思いだすと、酸素が薄くなるような気がします。あれはしんどい夏でした……。 などと言ってみたものの、実際勉強をしているのは息子であって、じつは母は大してなにもしていません。息子は夏期講習がある日は午前中一杯勉強をしてから家を出て、昼から授業、20時すぎに帰宅します。塾に行っている間、親はフリー。なんなら小学校と塾がある平日のほうが忙しかったはず。 それでも、その間にやるべき仕事をすべて片付け(フリーランスなので時間の融通はききますが、成果報酬で執筆と編集はなかなかの量です)、家事と買い物、下の子の夏休みイベント、夕飯の支度をしてお風呂を沸かし、合間に志望校の情報収集や説明会などのスケジュールチェックに模試の申し込み、間違えた問題を整理して付箋を張りコピー……それらをすべてミスなく終えてジャストタイムで息子を待つというのは、それなりに緊張感がある日々でした。 そして「今日も塾が長いな、頑張ってるな」「それなのに授業中のテストでクラスが落ちて、がっかりしないといいけど」「帰宅したらあの問題をやり直して、手をつけてないあの単元の復習もしないと」「あッ、学校説明会の予約開始、今日だった!」「え!? クラス落ちた?……もしかしてみんなもっと勉強してる?」「ていうか学校の宿題はいったいいつやれば?」「丸一日息抜きをさせてあげたいけど、やることリストが……」「ああ、進まない原稿どうしよう」など、ちっとも精神的に休まりません。きっと受験生の母は皆同じかなと思います。 遠出はできないので、原稿を書いたり、音楽をきいたり、合間にNETFLIXを見たりするのが息抜きでした。でも怖いもの見たさ(?)で韓流受験戦争ドラマ「スカイキャッスル」を見てしまってむしろますますお腹が一杯に……。 そしていくら受験生でも、息子がいつだってやる気100%なはずもなく、というかむしろ塾のあとは机に向かうのさえ無理、みたいな顔をして帰宅します。気持ちはものすごくわかるけど、寝る前に間違えた問題の見直しをしたら……みたいなバトルも頻繁に勃発します。 しかし一方で、ずっと頭から離れない疑問もありました。
佐野 倫子