【トランプ復帰は台湾に追い風?】対中人事に期待を持つも不安も残る頼清徳政権
ルビオ氏とワルツ氏の登場は、台湾では明るい兆しとして受け止められた。ワルツ氏は2年前に台湾を訪問し、当時の蔡総統と会談した。昨年の米下院外交委員会の公聴会では、習主席が2027年までに台湾に侵攻できるよう中国軍に指示したとの米当局者の発言を受け、延期されていた米国の兵器システムの台湾への配備を加速すべきだと主張した。同氏は、米国による一連の武器引き渡しは2027~2029年に予定されており、「抑止力の観点からは遅すぎる」とも述べた。 台湾の当局者は、マスク氏の役割をどう解釈すべきか確信を持てずにいる。テスラ最高経営責任者(CEO)として中国とのビジネス上のつながりや、台湾を中国のハワイに相当すると表現する彼の政治的見解は、懸念を引き起こしている。衛星インターネットプロバイダーのStarlinkは、台湾市場に参入できていない。 台湾の安全保障当局者は、第1期トランプ政権の米中貿易摩擦に言及し、「すべての発端となった大統領が戻ってきた」、「実のところ、北京は我々よりもはるかに多くの圧力を感じているはずだ」と言う。 * * *
高まる台湾防衛にとっての米国の重要性
台湾の人々はトランプ政権の成立を重大な懸念を以て見ているに違いないとウォールストリート・ジャーナル紙の記者が述べている。 トランプはかつて、台湾にはもっと多くの防衛費を負担してほしい、台湾の半導体メーカーたちは米国に多くの投資を行い、「米国の雇用を奪った」と述べたことがある。さらには、米国は台湾防衛費を負担する「保険屋」に成り下がり、台湾は自らを守るために、米国に一方的に依存している、と露骨に述べたこともある。 米国議会は台湾との間では、中華人民共和国を外交承認した際に、国内法「台湾関係法」(1979年)を制定し、以後、今日までその規定にのっとり米国は台湾に対し防衛用の武器供与を行ってきた。従って、事実上台湾海峡の平和と安全はこの「台湾関係法」に決定的に依存している。このことはトランプにとっては、台湾は米国の支援に依存し安全を米国に頼りっぱなしだということになる。 このようなトランプの発言のために、台湾の有識者の中には、いざという有事の際にトランプ政権に頼ることはできないという悲観論さえ出てくることになった。これは米国の支援に期待できない、米国が台湾を守ってくれるかわからない、という意味での「疑米論」と呼ばれるものである。 ただし、民進党の頼清徳政権成立から半年になろうとしている今日では、台湾の世論調査を見れば、台湾の中では現実論として、台湾防衛にとっての米国の重要性がより多くの人々に受け入れられつつあると言えるだろう。 このことを、上記の記事は、頼清徳をはじめとする台湾当局者はトランプ次期米大統領就任に対して、全体として肯定的に見ていると記述している。