【失敗からの逆転劇】H3ロケット「こういう日が来るから」 “打ち上げ成功”まで…技術者たちの2516日 <NNNセレクション>
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今年2月、見事打ち上げに成功したH3ロケット。歓喜にわいた現場だったが、その道のりは困難を極め、1年前の打ち上げ失敗では280億円の貴重な衛星もろとも失っていた。 【誰が行く?】日本人が月へ! 貴重な水を見つけられるか 記者が解説“アルテミス計画” 取材班は、国の威信をかけた巨大プロジェクトの舞台裏に7年間密着し、その軌跡を追った。挫折を経験した技術者たちの合言葉は「Return To Flight」。JAXAの責任者は、打ち上げ成功後の会見で「失敗が技術者を強くする」と語った。
■ロケットの失敗は「やっちゃいけないこと」
2024年2月17日午前9時22分―――。ついにH3ロケット2号機の打ち上げに成功した。 JAXA・岡田匡史プロジェクトマネジャー 「ものすごく重い肩の荷が下りた気がします。ロケットの失敗はやっちゃいけないことなんですね」 「ただ失敗があると、ものすごくエンジニアが強くなる。この1年で強くなったエンジニア。本当に『後はよろしく頼むぞ』と」 三菱重工の柴田晶羽(あきは)さんは、「失敗したときに、すごいつらかったんですよね。もう会社辞めたいなと思ったんですけど…」と、目頭を押さえながら話した。 それでも、ロケット技術者たちは、何度も襲いかかる困難に立ち向かってきた。
■子どもをあやす父の顔 現場では「笑えない」
新型ロケットH3は、10年前から開発が始まった。2018年9月、ロケットに搭載する新型エンジン「LE-9」は、着火試験のため秋田・大館市の田代試験場へ向かっていた。 設計したのは三菱重工の前田剛典さん。「設計したのが自分なので、“重心がこうだから、こっちを先に引っ張る”とか、物をのっけてもいい場所も分かるので」と、引き締まった表情で作業を見つめていた。 ただ、その前田さんも一児の父親。家では、当時生後5か月の七海(ななみ)ちゃんをあやしていた。“試験場で見せる表情とは全然違う”という記者の質問に―――。 前田さん 「違います?あっちでは笑わないですもんね。笑えないですからね」
■先輩はなく…自分だけでトライアンドエラー
若い技術者たちも奮闘していた。三菱重工・長崎茜さんが挑戦していたのは、日本初となる3Dプリンターによるロケット部品の製造だ。 長崎茜さん 「先輩方からの意見を聞けずに、自分でやってトライアンドエラーで闘っていくしかないのが、なかなか大変でした」 長崎さんと同期入社の柴田晶羽さんは、打ち上げ時の強烈な振動をおさえる部品「PSD(=Pogo Suppression Device)」を設計した。 柴田さん 「振動試験というのをやっていて、そこで壊れています。会社を辞めようかと思いました」