12月27日の預金残高20万円、社員14名…絶体絶命の起業8年目の年の瀬、6歳娘の言葉に父は涙が止まらなかった
■新たな目標で本気モード その直後にコロナの緊急事態宣言が出てしばらく営業活動ができなかったが、2021年からは順調に売れていき、コロナ危機はフルリモート化のきっかけにもなった。 そして瀬川は、新たな目標を手にして、またしても本気モードになっているという。 「ある大手アパレルメーカーの社長さんから、FULL KAITENが広まったら大量廃棄の問題を解決できますねと言われたんです」 つまり、FULL KAITENが普及してこの世から不良在庫が一掃されれば、それはすなわち、この世から大量廃棄がなくなることを意味するというわけだ。大量に生産して、売れ残ったものを大量に廃棄するという、現在の資本主義社会では当然とされている生産システムが、適正な生産をして、適正な在庫を持ち、大量廃棄を抑制するシステムへと、FULL KAITENの力によって転換するかもしれない。 瀬川が熱弁する。 「この社長さんのお話を聞いて、視座がぐっと上がりました。シャツ1枚を作るのに、水をどれだけ使うか知っていますか? 3トンですよ。そして、シャツを1枚廃棄するのにも資源を使うことになるんです。つまり人類は大量生産するために大量の資源を使い、大量廃棄するためにも大量の資源を使っている。FULL KAITENにはこの大量生産、大量廃棄の問題を解決する力があるんです」 ■VCの厳しい要求にもストレスを感じない VCは厳しく数値目標のクリアを求めてくる。彼らはフルカイテンが高い企業価値を持った状態で上場してくれなければ、利益を上げられないからだ。しかし、いまの瀬川はVCからの成長の要求を、まったく厳しいと感じないという。 「ストレスは感じませんね。だって、もしも大量廃棄の問題を解決できたら、子や孫にいまよりいい地球を残せるじゃありませんか。このミッションを達成するためには、事業を成長させなくては話になりません。この会社を大きく育てて、FULL KAITENを世界に持っていくんです!」 宮本がつぶやく。 「起業してから、いまが一番いい状態かもしれません。しんどいのはしんどいけれど、成長しているという実感のあるしんどさなので、しんどいけどがんばるでーって感じです(笑)」