竹野内豊「戦争を身近に感じる時代に意味が」大和沈没時兵士救った“幸運艦”描いた「雪風」主演
竹野内豊(53)が、太平洋戦争の終戦をほぼ無傷で迎えた、大日本帝国海軍で唯一の駆逐艦を描いた映画「雪風 YUKIKAZE」(山田敏久監督、25年8月公開)に主演することが9日、分かった。 米国をはじめ、戦勝国からも“世界一の幸運艦”などとたたえられた伝説の“不沈艦”を、史実に基づきフィクションとして描いた作品。竹野内は雪風の艦長・寺澤一利を演じる。 「2025年に日本は終戦80年を迎えます。昨今、残念ながら戦争を身近に感じる時代になり、変わりゆく日本の景色の中で本作が世に送り出されることにも必ず意味があるのだろうと、信じたいです」と世界各地で紛争が起きている世界情勢を踏まえ、作品を世に送り届ける意義を強調した。 駆逐艦は、その機動性ゆえに太平洋戦争では戦闘、艦隊護衛に加え輸送、上陸支援、沈没艦船の乗員救助などに駆り出され、数々の過酷な戦場で活躍も消耗し、沈んでいった。その中「雪風」は、1945年(昭20)4月7日に九州南方海域で行われた坊ノ岬沖海戦で、戦艦大和が撃沈された中、敵の攻撃で海に投げ出された兵士を救った。主力だった甲型駆逐艦38隻のうち、激戦を生き抜き、沈むことなく終戦を迎えたのは、雪風ただ1隻。乗員救助は、敵味方関係なく行い続け、雪風の戦う意味は「生きて帰り、生きて返す」ことになっていった。 竹野内が演じる寺澤一利は、さまざまな資料を基に生み出されたオリジナルキャラクターだ。絶えず冷静に指示を下し、時には型破りな判断で激戦をくぐり抜けてみせるリーダーシップと、武士道を信念に携えた、いわゆる一般的な軍人像とは一線を画す、澄み切った人間性を持つ人物だ。 竹野内は、ブルーリボン賞主演男優賞を受賞した11年の主演映画「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-」で、実在した旧日本兵の故大場栄大尉を演じた経験を持つ。それでも「戦争を経験していない自分が史実に基づく人物を演じることは、さまざまな不安もありましたが、気を引き締めて役に挑みました」と、戦争と史実に向き合うことへの覚悟を新たにした。 戦後「雪風」は復員船として航海を繰り返し、外地に取り残された約1万3000人を日本に送り返した。その後は賠償艦として連合国側に引き渡され、台湾に渡り「丹陽」と改名。再び駆逐艦としての役割を果たし、まさに戦争の後始末を背負い続けた。そして、大阪万博が開かれた1970年に破損し、解体。翌71年にいかりと舵輪のみ、日本に返還された。「雪風 YUKIKAZE」は、そうした雪風を軸に、太平洋戦争の渦中から戦後、現代へとつながる激動の時代を背景に、懸命に生き抜いた人々の姿とその運命を、壮大なスケールで描く。 撮影は今年5月から6月にかけて行われ、現在は編集などのポストプロダクションが行われている。竹野内は「平和な未来を築き、美しい日本を守ってゆくには、私たちは何を想い、何を大切にしていかなければならないのか。この映画が1人1人、少しでも多くの皆様方の心に届き、考えるきっかけになれば幸いです」と呼びかけた。