VW「ゴルフGTI」は「老舗の蕎麦屋のカツ丼」!? 本家FFホットハッチの高度なトータルバランスは感動ものです【AMWリレーインプレ】
飽きることなくチャキチャキ走りを楽しめる
結論を言おう。現行型ゴルフGTIはいわば、「老舗の蕎麦屋のカツ丼」のような存在だ。昔、年間100食のペースでカツ丼を食べ歩いていた(そしてブクブク太った)ことのある自分が言うから間違いない。 カツ単体のボリューム感やサクサク感なら大抵、トンカツ屋に軍配が上がるだろう。しかし、カツと玉ねぎを卵でとじて白飯にかける、「カツ丼」という一個の料理としては別の話で、時として蕎麦屋のメニューについでのように載っているカツ丼が、トータルバランスで上回ることがある。なぜかといえば、きちんとした蕎麦屋が長年にわたり洗練させてきた「だしの効いたつゆ」が、カツ丼の各具材を統合して高次元に引き上げるからだ。 その「だしつゆ」がゴルフGTIでいえばVWの名人芸のようなシャシーチューニングだとすれば、トンカツはエンジンに相当する。いい蕎麦屋のカツ丼は、店によっては肉厚1cm未満だったりするが、その方が衣や卵や出汁とのバランスが絶妙だったりする。 ゴルフGTIの245psはじつは十分以上にパワフルなのだが、スペックの絶対値や刺激の強さでは今どき上をいくライバルも多いし、どれを選ぶのも人それぞれの好みだ。それでも、成熟きわまったゴルフGTIは、ぜひ一度は味わってみる価値があるはず。それは、フォルクスワーゲンという大衆車の老舗がずっと育んできた、FFホットハッチという名の「ごちそう」なのだから。 * * * なおVWゴルフ2024年1月24日にドイツ本国でフェイスリフトを受け、いわば「ゴルフ8.5」に。あわせてゴルフGTIの次期型も発表されたが、スタイルやインフォテインメントの強化のほかはエンジンパワーが少し増強される程度で、従来の美点は変わらない模様だ。 本稿執筆時点でVWジャパンのゴルフGTIウェブサイトには「※現行モデルはご好評により完売しました。新型モデルの情報をお待ちください」と記されている。はたして2024年度中に日本導入されるかどうか、期待して待ちたい。