VW「ゴルフGTI」は「老舗の蕎麦屋のカツ丼」!? 本家FFホットハッチの高度なトータルバランスは感動ものです【AMWリレーインプレ】
音も振動も、アナログな感触がなんとも愛おしい
都内でゴルフGTIを受け取りSTARTボタンを押すとエンジンが始動し、左右2本出しマフラーが奏でる「ブロロロ」っというエキゾーストノートは「コンフォート」モードでもなかなかよく響き、「スポーツ」モードではさらに太く轟く。やはり前世紀生まれのクルマ好きとしては、この演出だけでも気分が盛り上がってしまう。 試乗車はオプションの「DCCパッケージ」(23万1000円/消費税込)を装備していて、ホイールは標準より1インチ大きい19インチ、タイヤは235/35R19を履くが、街乗りでの乗り心地に角はない。アダプティブシャシーコントロールのDCCでは「カスタム」モードでダンパーの減衰力を15段階で調整でき、コンフォートモードより低い方に3段階、スポーツモードより硬い方に3段階が用意されている。コンフォートのままでもホットハッチとしてはマイルドな乗り心地だが、もちろん素のゴルフよりは硬めなので、同乗者がいるときはもっと足を柔らかくするのもありだろう。 今回は終始1人でドライブしたので基本的にずっとスポーツモード。現行ゴルフではインフォテインメントやACC(追従式クルーズコントロール)などのADAS(先進運転支援システム)も非常に優秀といえるレベルへ進化しているのだけれども、それらを一切使うことはなかった。パワフルなエンジンに響きわたるエキゾーストノートに硬めの足。音も振動も、アナログな感触がなんとも愛おしく、ずっと味わっていられる。
電子制御LSDがFFホットハッチの俊敏さをさらにアップ
地元のワインディングに行ってみれば、何もかも意のままにクイックに操ることができてしかも安心感も備える、ゴルフGTIの走りはひたすら気持ちいい。7速DSG(デュアルクラッチ)はマニュアルモードで操作しても迅速なシフトチェンジをするし、赤いアクセントが入ったタータンチェックのGTI専用シートは強めの横Gをかけても体幹部と脇腹をしっかりホールドしてくれる。 2.0Lエンジンはベタ踏みすればレッドゾーンの6500rpmまですぐ吹け上がるが、3000~4000rpmでも太いトルクを安定して発揮するし、ブレーキもまた、踏み始めから奥の方までしっかり分厚い制動力が頼もしい。 今回の試乗でとくに感動したのが、ゴルフGTIにのみ装備される「電子制御油圧式フロントディファレンシャルロック」、いわゆる電子制御LSD。これは先代ゴルフ7ではGTIの限定モデルにだけ用意されていたのが現行型GTIでは標準装備となっている。 思えば2年前は、昔ながらのFF車の常識のまま、コーナリング中にアクセルを強く踏み込んだりしなかったので、電子制御LSDの恩恵を味わうことがなかったわけだ。そこで今回、コーナリング中にこわごわとスロットルを開いていくと、グリップを失う気配もなくスイスイっと気持ちよく旋回していく。もとより限界を試す気などないが、想像以上のスピードでスマートにコーナーを駆け抜けていける。 たとえるなら、後輪操舵を備えてコマのようにグイグイ曲がっていくルノーのFFホットハッチ「メガーヌR.S.」が、「まず快感! そして速い」だとすれば、ゴルフGTIのシュアーな旋回感覚は、「まず速い! それが快感」といったところだろうか。