「円安阻止介入」目前!?…止まらない〈投機的円売り〉に終わりは来るのか【国際金融アナリストの見解】
投機筋による「ドル買い・円売り」が再拡大する背景
それでは、日米金利差の米ドル優位が縮小に向かったにもかかわらず、投機筋ではなぜ米ドル買い・円売りが再拡大に向かったのか? それは、金利差の大小の変化とは関係なく、米ドル優位の状況下においては、「米ドル買い・円売り」が圧倒的有利といえるためではないでしょうか。 足元の日米政策金利差の米ドル優位・円劣位は、3月の日銀によるマイナス金利解除で、5.6%から5.5%に縮小しましたが、依然として、記録的ともいえる「大幅な金利差」があることには変わりありません。 最近のように、日米の政策金利差の「米ドル優位・円劣位」が5%程度だったのは、2007年にもありましたが、この時にCFTC統計の投機筋の円売り越しは、18万枚以上に拡大しました(図表4参照)。確認できる限りで、同統計の円売り越しが15万枚以上に拡大したのはこの時だけなので、この2007年の円売りは、極端に行き過ぎた「円売りバブル」の発生といえるのではないでしょうか。 要するに、直近の日米金利差の米ドル優位・円劣位は、過去に「円売りバブル」が発生したときと同様の「記録的な大幅」となっているわけです。それを踏まえ、投機筋にとって有利な米ドル買い・円売りが継続し、ついに2022年10月の米ドル高・円安の記録も更新してしまった、ということではないでしょうか。 ただし、このような米ドル高・円安に対して、鈴木財務相は3月27日、「あらゆるオプションを排除せずに断固たる措置をとっていきたい」と発言しました。こういった表現は、私の経験則として、通貨当局による為替市場への介入が決まったあとで使う可能性が高いものです。 ちなみに、日本の通貨当局は2022年9~10月に円安阻止で市場に介入しましたが、介入前に実質的な責任者である神田財務官は、「あらゆる措置を排除せず、為替市場において必要な対応を取る準備がある」(9月8日「三者会合」後の記者会見)と語り、この発言後、米ドル高・円安が進むとすぐに米ドル売り・円買いの市場介入に踏み切りました(図表5参照)。 この「神田発言」と上述の「鈴木発言」では、市場介入を示唆する「為替市場において必要な対応」という表現が、「断固たる措置」となっていることはあるものの、基本的には似ていると言ってよいでしょう。以上を踏まえると、通貨当局は2022年以来の円安阻止介入をすでに決めたか、あるいは決めつつある可能性が高いと想定します。