『切り裂きジャック』『サイコパス』犯罪めぐる検索履歴…紀州のドン・ファン元妻 覚醒剤めぐる“供述変遷”は「当時から殺人者扱い。何を言ってもダメだなって」死亡当日の行動は説明窮する場面も【被告人質問詳報】
“購入を頼まれた”は起訴前になかった説明… 検察官「言わなかったのはなぜ?」
おそらく最後に取っておいたのだろう。検察官は切り札として、そもそも “野﨑さんから覚醒剤購入を頼まれた” という説明を、起訴前の取り調べで須藤被告が一切していなかった点を突いた。 検察官「野﨑さんから頼まれたと言わなかったのはなぜ?」 被告 「言ったらどうなるか分からないから」 検察官「というのは?」 被告 「現にいまこうして、(覚醒剤の本物ではなく結果的に)氷砂糖を買っても逮捕・起訴されているわけですから。当時から殺人者扱いでしたし、怖くて言えませんでした」 「検事の中にストーリーがあるから、何を言ってもダメだなって」
野﨑さん死亡当日の「8回の階層上昇」被告が答えに窮する場面も…
野﨑さんが亡くなった2018年5月24日の午後4時50分~午後8時00分、つまり「被告が覚醒剤を摂取させたと検察側がみている時間帯」の行動をめぐり、アプリの分析で「8回の階層上昇」が確認された点も追及された。弁護人の質問の際にも、被告の説明が、やや曖昧さを帯びた部分である。 検察官は、前月の4月までさかのぼって、1日ずつ「午後4時50分~午後8時00分の階層上昇回数」を読み上げた。「0」~「3」が並ぶ中、「5」と「6」が1日ずつだけあった。 検察官「基本的に1とか0とか、2、3なんです。8というのは、だいぶ不自然だと思いますが?」 被告 「4月21日とかも同じことがあったと思います」 検察官「6は、8に近いと?」 被告 「はい」 検察官としては “罠にかかってくれた”と思ったかもしれない。確かに、4月21日の当該時間帯には6回、4月20日の当該時間帯は5回の階層上昇が確認されているが、それぞれの時間帯に、被告は田辺市内の自動車教習所にも行っていた。そうした野﨑さん宅の外にいた時間の階層上昇を差し引くと、階層上昇は「3」「2」に減るのである。 検察官「あなたの指摘した5回や6回は、すべてが自宅(野﨑さん宅)ではないということで、事件前の1ヵ月で(午後4時50分~午後8時00分の階層上昇は)最大3回であるのに対し、事件当日は8回ということになります。あらためて、不自然ではないですか?」 被告 「多いなって思います」 検察官「なぜ多いと思いますか?」 被告 「うーん...(5秒ほど沈黙)わかんないです」 検察官「明らかに8回ものぼるのは日常ではないと思うんです。なので(野﨑さん死亡当日の)午後4時50分から午後8時の間に8回のぼった理由を、頑張って思い出してもらえませんか?」 “日常的に午後7時台や午後8時台は、頻繁に上り下りしていたという感覚”と答えるなど、被告の説明が苦しくなった。 検察官「(普段の回数に)1とか2を足したとしても、8にはならないと思うんです。不自然な理由を、何か説明できますか?」 被告 「犯行時刻ですよね、午後4時50分…。それって、特殊なカプセルを使った場合ですよね…」 検察官「(5月24日は)午後6時から午後8時に(区切ったとして)も7回あるので、結局同じことです。不自然ではないですか?」 被告 「多いなって思いました」 検察官「何か説明できませんか、不自然さ(の理由)を」 被告 「たとえば当日、説明したように、2階にバスローブを取りに、取りに行こうとして、持っていこうとして、1回戻って取りに行くって、そういう場合で(階層上昇が)カウントされちゃうことがあるので、当日はバッグを2階に置いていた状況だったので。普段は1階に置いているんですけど、たまに2階に置いているので…」 検察官「だとしても他に多い日はないですが、何か理由はありますか。なかったらないでいいですが?」 被告 「ないです」 最後は、須藤被告は説得力のある説明をあきらめたかのようだった。 被告人質問は3日目に続いていく。 (MBS報道センター 松本陸・宮腰友理)