物流TOB合戦は佐川の「異次元の高値買収」で決着へ、株式市場からは厳しい評価、巨額買収の果実は?
一方、SGHD側からすると、まさに異次元の高値づかみにみえる。丸和HDの買い付け価格1株3000円からは実に91%も高い。今期計画の1株利益から計算すると、PER(株価収益率)は49倍にもなる。前述のように、もともとのC&Fの株価水準はさらに低いのだ。 物流事業におけるシナジーについて、SGHDの松本秀一社長は「われわれは佐川急便を中心としたラストワンマイルに強みがある。C&Fは上流から中流の、われわれが手掛けていないところをやっており、掛け合わせることで一気通貫の物流ができる。どのようなシナジーを出せるか、さまざまに検討している」と説明した。
■宅配便以外を広げるSGHD SGHDは2030年度に向けて、宅配便以外の事業を広げる構想を持つ。今回のTOBはその一手でもある。とはいえ、C&Fの前2024年3月期の営業利益は47億円、当期純利益は32億円と利益貢献は小さい。いかに佐川急便から送客し、効率化などを進めても、1237億円の買収額に見合ったシナジーを出せるのかは疑問符が付く。 ここには、SGHDとしてマーケットの評価と異なる考え方があったとみられる。
低温物流にはつねに温度管理を行うための専用設備が必要だ。そのため、C&Fは全国各地に自前の物流センターを持っている(2023年3月末時点の土地の簿価は約170億円)。また、同社は業界では珍しく自社ドライバーを多く抱える。2024年3月時点でドライバーは4103人。トラックも2872台を数える。 仮にSGHDが今からこの物流網を構築するとなれば、相当な時間とコストを要する。建築コストが高騰している現状ならなおさらだ。
C&Fの資産について、SGHDの松本社長は売却・流動化する考えはないとしており「互いのアセットを把握した上でどう生かしていくか考える」と語っている。デューデリジェンスを経て、C&Fの物流網の価値に着目してきたはずだ。 また、低温物流企業の買収機会が少ないこともある。業界は冷凍食品大手・ニチレイ傘下のニチレイロジグループ本社。調味料大手・キユーピーグループのキユーソー流通システム。味の素やハウス食品グループ本社、カゴメ等が出資するF-LINEなどが大手だ。