なぜエディー率いるイングランドはオールブラックスの3連覇を阻止できたのか?
勝者は、最初のキックオフから変化をつけた。 スタンドオフのジョージ・フォードが蹴ると見せかけ、右隣のファレルがボールを受け取り、敵陣22メートル線付近左へキックした。 直後にハーフ線付近左で自軍ラインアウトを獲得し、強力なランナーが次々と突進。かすかに防御の乱れた右サイドを、フルバックのエリオット・デイリー、ウイングのアンソニー・ワトソンが攻略した。ここから22メートル線付近で左へ展開すると、テンポよく右へ折り返す。 攻撃陣形の前方部に立つフォワードの選手たちが、タックラーに捕まりながらも前に出て、深い角度のパスを放つ。イングランド代表の攻撃はさらに勢いを増し、開始わずか1分で、アウトサイドセンターのマヌ・トゥイランギが先制のトライ。キックも決まり7―0と奇襲に成功した。 以後もナンバーエイトのマコ・ヴニポラらパワフルなランナーが、相手司令塔団をめがけて突進した。試合後、ジョーンズ・ヘッドコーチは、日本語で「イングランドノ、イシキネ」と交え、英語で続ける。 「オールブラックスはラグビーの神。でも、彼らに対しても試合ができるという姿勢を見せたかった。彼らの勢いを殺そうとした。相手が何をすればエネルギーを出せるのかを見て、そこを削ぐ必要がある」 イングランド代表は、空中戦のラインアウトでも先手を取った。自軍ボール成功率は「90パーセント」対「81.8パーセント」と上回った。オールブラックスは、高さのある控えロックのスコット・バレットをフランカーで先発させて備えたはずだが、イングランド代表の果敢かつピンポイントな競り合いに手こずった。 前半16分頃には、自陣22メートル線付近左の1本をスティール。直後に味方が蹴り返して与えた同中盤左のラインアウトでも、その場で組まれたモールを止めた。ロックのコートニー・ローズは、元イングランド代表主将のスティーブ・ボースヴィック・フォワードコーチの分析と指導に「疑いもなく世界一のコーチです」と感謝した。 ちなみにローズは前半終了間際に好ジャッカルを繰り出し、ペナルティーゴールを手繰り寄せて10―0と点差を広げている。 ラックの成立前に真横からボールへ働きかけた自らの妙技については「最初にタックルをした味方選手のテクニックが素晴らしかった。私は身体を低く沈め、ボールに絡むことを意識しました」。80分間機能する鋭い出足の防御に関しても、こう胸を張った。 「コントロールされた状態で、スピードを持って、相手にプレッシャーをかけることを意識しました」