「日本最古のエレベーター」老舗料理店で今も現役 全国にファン、細部に知られざるデザインも
その答えをひもとくヒントが4階宴会場にあった。
実は、エレベーターのかごには東面と南面にそれぞれ扉がある。乗り降りする際、1~3階と5階は東面が開閉し、廊下とつながる。一方、4階だけは会場のスペースを最大限確保するため、南面が開閉する仕組みになっている。
建物の機能面をあらかじめ想定していなければエレベーターに二カ所も扉を設けないだろう。おのずと、ヴォーリズはエレベーターもひっくるめて建物を設計したのだと想像できる。于さんもこの一体感を大切にしている。
30年ほど前、エレベーターを新型に更新する案が浮上していた。旧式のメンテナンスは技術的にも費用的にも大変で、人件費もかかる。
だが、先代の店主が「建物との一体感をお客様に味わってもらえなくなる」と、現在のままを貫き通した。「最古のエレベーター」として全国的に知れ渡り、維持する手間が誇りへと変わった。
来年は建物が完成して100年目を迎える。于さんは「料理も建物もエレベーターも、伝統にのっとり守り続けたい。大変なことだけど、新しいものを生み出す基本にもなります」。