「日本最古のエレベーター」老舗料理店で今も現役 全国にファン、細部に知られざるデザインも
中国料理店・東華菜館(京都市下京区四条大橋西詰)に設置されている日本最古のエレベーターが、製造、輸入されてから1世紀を迎えた。料理を楽しみに訪れた客人を今も現役で乗せている。その細部を見渡すと、不思議で味わいのある意匠がちりばめられていた。 時の経過を思わせるエレベーター内。趣ある様子はこちら
米国出身の建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880~1964年)が設計した唯一のレストラン建築である東華菜館は26年に完成。当時は西洋料理店だったが、終戦前後に同店が買い取った。スパニッシュ・バロック様式で地上5階、地下1階建てだ。
エレベーターは24年に米OTIS社で製造、輸入された。店の入り口右手に備え付けられ、鉄の外扉の奥に黄金色に輝く真ちゅう格子型の蛇腹式内扉が存在感を放つ。
かごの積載重量は約900キロ。手動式で店員が扉を開け閉めし、ハンドルで昇降を運転する。機械室内の制御盤以外はほぼ当時のままだ。乗降口にはめ込まれたOTIS社製を表すプレートは一部が読み取れないほどに摩耗し、歴史を感じさせる。
テレビドラマの撮影にも使われ、乗りたいがために訪れる人もいるほど全国に知られたエレベーターとなったが、まだ知られざる意匠がある。
たとえば、乗降口の上部に備え付けられた、各階を示す半円型の「フロアインジケーター」は1~4階はかまくら型なのに対し、5階のみ反転している。最上階を表しているのか、その意図は分からない。
「かごの上の意匠を見てみてください」。店長の于修忠さん(53)が促す。そこには中華系の丼鉢にみられる渦巻きのような印があった。「永遠に続く命」の意味が込められた「メアンダー」という意匠だ。
この意匠は建物の柱にも見受けられ、エレベーターとの一体感を演出している。ただ、エレベーターは建物が完成する2年前に製造されたものだ。エレベーターのデザインを建物に取り入れたのか。設計の段階でエレベーターも含めてデザインしていたのか。