<一球入魂・’22センバツ木更津総合>第1部 軌跡/5止 悔し涙を歓喜の涙に 力不足痛感、エースが奮起 /千葉
茨城県で開催された関東大会準々決勝(2021年11月2日)で、木更津総合は強豪の東海大相模(神奈川1位)と対戦した。3点リードで迎えた九回裏1死一塁、先発したエースの越井颯一郎投手(2年)は最後の打者を直球で併殺に仕留めた。ガッツポーズで喜びを爆発させると、汗と涙でぬれた頰を左袖で拭い、マウンドから捕手の中西祐樹主将(同)の元に駆け寄った。 五島卓道監督が「神がかっていた」と評す投球をした越井には、秋の公式戦で「最もきつく、感情的になった」と振り返る試合があった。 県大会準々決勝で市船橋に打ち崩された。前日の3回戦で完封したこともあり、疲労が残っていた。「連投だからしょうがない。ピンチを気持ちで乗り切ろう」と自分に言い聞かせて腕を振ったが、九回、死球で走者を出すと連続安打を浴びて5―5に追い付かれ、この回を終えて降板した。チームは十回に勝ち越して勝利したが、越井は悔し涙が止まらなかった。「情けない。自分の力不足を認めるしかない」。五島監督は越井をベンチに呼び出し、「悔し涙を流すのは1回にしろ」と声を掛け、奮起を促した。 試合後、得意のスライダーがもっと生きるように力強い直球を目指した。「エースナンバーを背負う以上、チームを勝たせるピッチャーになる」。強い足腰を作るため、練習グラウンドに併設された砂地で走り込んだ。長い試合にも対応できるスタミナをつけようと、走って息が上がった状態で投球練習をした。 東海大相模戦で最後の一球となった直球。越井は試合後、「自信があった」と力強く語った。五島監督は4強入りを果たした関東大会をこう振り返った。「悔しい涙は見ても、うれしい涙はめったに見ない。試合後に見た選手の涙は忘れられない」 22年1月28日、木更津総合に一足早い春の知らせが届いた。6年ぶり4回目のセンバツ出場が決まったこの日の記者会見で、五島監督は「今年のセンバツのキャッチフレーズは『自信』。我を疑わず自信を持って伸び伸びと、甲子園で大暴れしてください。頑張りましょう」と選手たちに呼び掛けた。新チーム発足から秋の公式戦を通じて力を付けた木更津総合ナインは、大きな自信を武器に日本一を目指す。=第1部おわり