爆音と人が死んでいく恐怖の中での生活しか知らない子どもたちに、ダンスを教えるウクライナ人女性「言葉では表現できない。だから踊る」という理由
ロシアによるウクライナ侵攻が始まって2年が過ぎた。中東情勢の悪化などもあり、ウクライナの国際情勢を伝える日本国内での報道は少なくなってきているが、依然として緊迫した状況が続いているという。4月にウクライナ国内の戦場最前線を取材した戦場カメラマンの横田徹氏が近況をレポートする。 【画像】ウクライナの瓦礫の街で踊る女性
戦時下のウクライナの夫婦
ウクライナ取材は今回で5回目を迎え、昨年7月にウクライナ東部の前線を訪れてから8か月を過ぎた。昨年5月に激戦の末にバフムトは陥落し、今年2月にはウクライナ軍がウクライナ東部・ドネツク州の工業都市、アウディーイウカから撤退した。 ロシア軍は要所のチャシブヤール奪還を目標に猛攻撃を仕掛けている。アメリカや同盟国からの武器供与の停止で戦況は悪化し、兵士の消耗にも拍車をかけている。ロシア軍のウクライナ侵攻から3年目、アウディーイウカで戦っていたというウクライナ軍の兵士によると「密集していたロシア軍部隊を叩くチャンスはあったにもかかわらず、肝心の砲弾がないために好機を何度も逃した」と話していた。このまま武器の支援を受けられなければロシア軍のさらなる進軍を止めることはできないという。 一進一退の攻防が続く前線から後方基地のあるウクライナ東部、ドネツク州のクラマトルスクで私は24歳のダンサーのヴィカと出会った。彼女はウクライナ東部の前線で兵士として部隊の記録映像を撮っている夫のオレクセイに会うために、キーウからクラマトルスクまで来ているのだという。芸術に携わる両親のもとに生まれたヴィカはキーウの芸術大学を卒業してダンサーの道に進んだ。 2022年2月24日のロシアの侵攻後はダンサーとしての仕事はなくなり、かつて踊っていた劇場は戦火から逃れる避難民の避難所になった。ヴィカは人道支援のボランティアとしてキーウ-イルピン間の物資輸送の活動をしていた。オレクセイはかつて映画関連の仕事をしていて、もともとヴィカとは友人関係だったという。ヴィカは偶然にも開戦直後にイルピンに派遣されていたオレクセイと再会する。ふたりは恋に落ち、すぐに結婚を決めたという。戦時中のウクライナではこのような夫婦は珍しくない。