ファンタジーの庭園で幻想的なハイキング体験【ブーツの国の街角で/イタリア・ラツィオ州】
■限られた日時しか見学できない幻想的な庭園
かつてニューヨーク・タイムズ紙で「世界で最も美しくロマンティックな庭園」と絶賛されたニンファの庭園は、ローマから約80kmほど南下したチステルナ・ティ・ラティーナ市の領内にある。ラツィオ州の天然記念物にも指定されているこの庭園は、世界でも数少ない「幻想世界のハイキングが楽しめる場所」として、イタリア国内のみならず、世界中のアウトドア愛好家を虜にしてきた。 ■【画像】ファンタジーの庭園での「幻想的な風景」6枚の写真 年間を通して見学できる日数は数えるほどしかないこの庭園は唯一無二の世界観を体現している場所であり、ヴァージニア ウルフやトルーマン カポーティをはじめとする数多くの文化人や芸術家たちの創作活動に多大なインスピレーションを与えてきた。 現在、ニンファの庭は、園内の自然環境バランスを厳格に保護する目的で、毎年3月から11月の土日のみ、入場者数を限って一般に公開されている。8ヘクタールの広さを誇る庭園内では、日本の紅葉や桜、竹、モクレン、シラカバ、水生アヤメなど 1,300種以上の植物が生息しており、本来は世界各地に点在している多彩な植物が自然のままの姿で共生している。野鳥が囀り鮮やかな蝶たちが舞う美しい庭園はとても幻想的な雰囲気に満ちていて、訪れた人にまるでファンタジー映画の中にいるかのような体験をさせてくれる。
■中世時代の村で共生する世界中の植物たち
『ニンファ(妖精)』という土地の名は、ここを流れるニンファ川の源泉に建てられていた古代ローマ神殿に由来する。中世時代には「ニンファ村」として広く認知されるようになったこのエリアは13世紀以降、教皇の孫てあるヒエトロII世・カエターニかニンファと近隣地域を買収して統治してきた。その後、1381年に起こった紛争て村は破壊され、さらに続くマラリアの蔓延で村は廃墟となってしまった。 長い年月を経た後、19世紀末に領地の所有者てあったカエターニ一族が、廃墟の村を世界て唯一のロマンティックな庭園として蘇らせるという計画に乗り出す。この計画は20世紀に入ってから少しすつ実行に移されていき、当時のカエターニ家の妻・マルケリータの発案によって、18世紀の英国式庭園をモテルとする現在のニンファの庭園が徐々に整備されていった。このマルケリータという女性は当時の文学者や芸術家に多大な影響を与えた人物て、トルーマン・カホーティやティラン・トーマスといった作家や詩人は彼女の手によって世界的に名を知られるようになったという。マルゲリータはこのニ ンファの庭園を作家や芸術家たちに開放し、彼らの創作活動に多大なインスヒレーションを与えた。 そんな夢とロマンに満ちた一族の情熱は、今でも庭園の隅々にまで息づいている。カエターニ家の人々が世界中を旅して集めた多彩な植物の中には、日本の桜や紅葉、楓、椿、熱帯地域のハナナやアボカド、アメリカ大陸のエアープラント、南米のオニブキ、中国の竹やエジプトのパピルスなと、イタリアては珍しい植物も生息している。庭園内の自然環境を調査し、それそれの植物の成長に最も適した場所を探して植樹されたため、との植物も枯れることなく生き生きと成長を続けている。まるで世界の自然が凝縮したようなその光景は、見ているだけでなんとも不思議な気分になってくる。