「123万円」に引き上げ、人手不足解消に期待 関西の中小企業は対応に課題も
令和7年度の与党税制改正大綱に、所得税の非課税枠「年収103万円の壁」を123万円に引き上げる方針が明記された。関西経済界からは人手不足の解消につながるとして歓迎の声が聞かれた。一方で賃金の総額が上がって企業負担が増える側面もあり、体力のない中小企業の対応は容易でないとの見方もある。 大阪商工会議所の鳥井信吾会頭(サントリーホールディングス副会長)は20日の会見で、年収の壁を意識して労働時間を抑える人は珍しくないと指摘。「壁撤廃は賃上げにもつながり、〝二兎を追う〟を実現できる大きなことだ」と評価した。 一方、年収の壁引き上げは企業の負担増を招く。利益の出ていない企業に労働時間を抑える動きが出れば、労働条件のいい会社に人材が流出する懸念もある。 りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は壁の引き上げについて一定の評価をしつつも、7年はパート労働者に社会保険料の負担が発生する「106万円の壁」が存在するとし、「仮に106万円以内に抑える動きが多ければ、人手不足の緩和効果は限定的となる」と分析する。 ただ、大綱には19~22歳の子の親の税負担を軽くする特定扶養控除に関し、子の年収要件を現行の103万円以下から150万円以下に緩和することも盛り込まれた。 荒木氏は飲食や小売り関連の中小企業にとって効果が大きいとの見方を示し、「労働時間を約1・5倍に増やすことも可能となる。学生によるアルバイトが貴重な労働力となっている業種では、人手不足の緩和につながるのではないか」とした。(井上浩平)