中国・35人死亡の車暴走事件 私たちを取り囲み、映像を消せと迫った謎の「市民」たち
実は私たちが謎の「市民」によって取材を妨害されたのは、今回が初めてではない。 南部・広西チワン族自治区で「犬肉祭り」を取材した際には、宿泊するホテルを出た瞬間から、数人の私服の男性たちがぴったりとついてきた。最初はただついてくるだけだったが「犬肉祭り」の感想を人々に聞こうとした瞬間、男性たちはおもむろに傘を広げ、話を聞こうとした相手と私たちとの間に立ちはだかった。雨は全く降っていない。カラフルな「傘男」たちに「警察ですか?」と話しかけても終始無言で、私たちの取材をひたすら妨害し続けた。地元の人たちは大してカメラを気にしていないのに、だ。 北部・内モンゴル自治区でも同じようなことが起きた。宿泊するホテルを出た瞬間から2台の車両に分乗した男性たちがフォーメーションを組んで尾行。話しかけても何も答えず、身分も明かさない。ひたすら私たちの写真や動画を撮りまくり、誰かに報告している。その上、私たちが路上で住民にインタビューしようとすると住民に対し「話すな」というジェスチャーを送る。当然ながらその威圧的な行動に人々は恐れをなし、口をつぐむ。ある女性に話を聞いていると近づいてきて「いい加減にしろ」と低い声で女性を恫喝することもあった。その時の女性の怯えたような目が今でも忘れられない。 仕方がなくインタビューをあきらめて街の様子を撮影していると、例の男性たちの一人が大声で「おい、こいつら日本人だぞ。日本人が俺たちの街で勝手に撮影してやがる。俺たち普通の『市民』の生活を邪魔するな!」と声を張り上げ、詰め寄ってきた。同調するように「俺は日本人が嫌いだ」と声をあげる「市民」もいた。危険を感じた私たちはその場を離れ、飲食店に入ったのだが「市民」たちは隣の席に座り、私たちを監視し続けた。監視は私たちが街を離れるまでずっと続いた。 彼ら「市民」を名乗る謎の男たち(時々女もいる)は何者なのか?警察とはどのような関係にあるのか?何の法律を根拠に私たちの取材を妨害し続けるのか?誰に聞いてもその答えは返ってこない。