全盲のランナーと福士加代子の絆「走ることは、生きること」
57歳の全盲のマラソンランナーと彼女を伴走者としてサポートしていた福士加代子さんとの絆を描いた特集がカンテレスポーツ公式YouTubeで配信されている。 ■【動画で見る】全盲のランナーと福士加代子の絆 YouTubeで配信中
「マラソンって孤独な競技とか言われるけど、私たちは伴走者がいる。苦しみは半分、喜びは2倍っていうことで楽しく走れるんじゃないかなって」 視覚障がい者が42.195㎞を走る、ブラインドマラソンで、リオ・パラリンピックで5位に入賞した全盲のランナー、近藤寛子さん、57歳。パリ・パラリンピックを目指す過程で、伴走者として依頼したのは4大会連続五輪出場の福士加代子さんでした。
20年以上前から、感情を素直に表現する走りをみせていた福士さんの姿が近藤さんにとってずっと憧れの存在でした。 「目が見えない私たちっていうのは、声だけで印象を感じ取るので、やっぱり笑顔あふれる方っていうのは、自分自身をありのままに表現されているなあというところにすごく魅力を感じたし、私自身もありのままの自分を表現しながら走ることができるんじゃないかって」 近藤さんの想いや生き方に共感した福士さんはパリで一緒に走るという依頼を快諾。できる限り、合宿などにも参加し、近藤さんのサポートを行ってきました。
3人の子供を育ててきた近藤さん。これまで何度も困難が訪れましたが、そのたびに立ち上がってきました。リオ・パラリンピックの2年前、一緒にリオに行こうと約束していた最愛の夫が他界。それでも、悲しみを乗り越え、2016年、約束の地で、5位入賞を果たします。その後、東京パラリンピックを目指す中、乳がんの手術、さらに、卵巣の摘出もしました。それも乗り越え、54歳までマラソンの自己ベストを更新し続けました。(自己ベストは3時間10分32秒) 一方で、2021年、目は完全に見えなくなり、最も障害の重い全盲のクラスに。それでも走り続けました。「過酷な全身運動は、病気を進行させるということで、お医者さんからは『やめた方が視力はずっと残せるよ』とは言われていたんですけど、私の中で走るっていうことを取ることはできなくて、もう目が見えなくなってもいいから走り続けるって」