ドラフト候補「最速150キロ」報道は本当か? 現場で聞いた驚き発言、球速を“盛る”ことも「あると思いますよ」…“最高球速”という数字の功罪
つい“盛って”しまうのでは?
そんなこんなで葛藤している際に、ふと思ったことがあった。後輩部員が計測を担当し、強面の先輩に「何キロだった?」と確認されたら、気圧されて“盛って”伝えるケースもあるのではないかと。この仮説を大林にぶつけると、苦笑しつつ「あると思いますよ」と回答があった。 「とんでもなく数字を盛ることはないと思いますけど、1キロ、2キロぐらいはあると思いますよ。142だったら、『144出てました! 』と言ったりとか。全然あるんじゃないですかね」 投手出身のスカウトに「報道にある最速の数値は参考にするのか」と尋ねたことがある。そのときの回答がこうだ。 「見るには見ますよ。球は速いに越したことはないし、これだけ出せるという“天井”の意味合いでも、頭には入れます。指標の一つだけど、重要視するかと言ったら違うかなあ。スカウト部の上司に報告をあげるときも、必ず平均球速を入れるようにします。最速に近い数字がコンスタントに出るかが重要なので」 スカウトたちは、乱立する“最速報道”に「惑わされることはない」。だが、前出のスカウトが「僕らには影響ないですけど」と言い、こう続けた。 「ファンの人たちが『すげえ速いピッチャーが入ってきた! 』と楽しみにしていたら、『違うじゃん』となるケースはあると思います。単発では出るけど、アベレージにすると全然ってピッチャーもやっぱりいるし、そもそも真っすぐで押していくタイプじゃないこともある。ドラフト候補の情報を集めるプロ野球ファンの人が惑わされる部分はあるんじゃないですかね」 ドキリとした。散々言っておきながらだが、私も一書き手として「最速●●キロ」という表現を使うことはある。もちろん、「話題の最速よりも、安定感に魅力」のように少しでもその投手の魅力が伝わる努力はしているつもりだ。だが、行数や誌面のスペースに限りのある紙媒体だと、「平均球速が▲▲キロに達し、回転数も豊富な~」などと書こうとしても書き切れない現状もある。その点、最速表示はコンパクトかつインパクトを持たせられるという、便利さがある。
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