もう保険制度は限界です…日本人に「イマイチなクスリ」を「バカ高い値段」で買わせる、製薬業界の「ヤバすぎるやり方」
年間10兆円に迫る、日本の莫大な「クスリ代」。手厚い医療のためなら、カネがかかっても仕方ない……と思うかもしれないが、そのうち少なからぬ金額が、「効果がイマイチなクスリ」に浪費されている。 【写真】「ジェネリックは効かない」の「原因と真相」
自民党議員に配られた「要望書」
ある文書がこの6月、製薬業界に激震をもたらした。「総理官邸直轄」と言われる自民党の「財政健全化推進本部」がとりまとめた提言書だ。 〈現役世代等の保険料負担に配慮する観点から、(クスリの)費用対効果評価の適用を拡大する〉 これに泡を食った製薬協(日本製薬工業協会)幹部らは、ただちに与党議員らの事務所を回り、【費用対効果評価の強化策には断固反対】と書いた「要望書」を配った。 自民党で、前述の提言書のとりまとめに関わった衆議院議員・大岡敏孝氏が「あくまで一議員の意見ですが」と前置きして、こう語る。 「私の事務所にも先日、関係者の方々がいらっしゃいましたが、『クスリの費用対効果評価の拡大を削除してくれ』の一点張りでした。 日本では、『良いクスリを高く評価し、効かないクスリの値段を下げる』という他の商品では当たり前のしくみがありません。効かないクスリを高い値段で保険適用していたら、国民は損するし、保険財政ももちません。 製薬業界の主張は、子供が『学校の通信簿をつけるな』と言っているようなもの。世界の企業と戦って勝ち抜かないといけない時代に、甘い話をしても国民のためにも企業のためにもなりません」 クスリの値段がどのように決まるのか、多くの国民は知らない。しかし、ベールに包まれたその内情を知ると、何も考えずにクスリをもらうのが怖くなってしまうかもしれない。日本の薬価制度や製薬会社のやり方は、誰の目から見ても、明らかにおかしいのだ。
あの降圧剤の「疑惑」
日本は世界でも新薬の数が突出して多い「創薬大国」と言われる。ところが実際には、新薬とは名ばかりのクスリを、ずさんな審査で承認し、むやみやたらと保険適用しているだけではないか……そう指摘する者は、医療従事者にも多い。 たとえば、高血圧のクスリで屈指の売上高を誇るアジルバ(武田薬品)がそのひとつだ。 2012年に承認されたアジルバはARBという種類の降圧剤で、7種あるARBのうち最も新しく、売り上げも年間730億円(2022年)と大きいが、審査過程に「不自然な点」があったという。薬剤師で大阪ファルマプラン・社会薬学研究所所長の廣田憲威氏(薬科学博士)が言う。 「新薬の審査では、ふつう薬効が似たクスリと比較して薬価を決めます。アジルバの場合、同じ武田薬品が開発しARBのブロプレスと比較されたのですが、なぜかブロプレス『8mg』とアジルバ『20mg』の薬効が比べられているのです」 要するに、同じ8mgで比較すると「既存のブロプレスと同じくらいしか効かない」という結果になるから、アジルバの量を増やしたのではないか、というわけだ。 「しかも、ブロプレスの用量が『一日最高12mgまで』なのに対し、アジルバは『40mgまで』とされている。用量を多く設定しているだけなのに『新薬だからよく効く』と言っているのではないか、と勘ぐってしまいます」(廣田氏) 新しい効果がいまひとつなのに、薬価が高いと言われるクスリは他にもある。多くの医療関係者が眉をひそめるのが、2014年に承認された胃薬のタケキャブ(武田薬品)だ。