映画『インスティゲイターズ 強盗ふたりとセラピスト』は強盗計画がとんでもないことになる痛快犯罪ムービー!
ハリウッドの王道ジャンルのひとつといえば、犯罪ムービー。犯罪劇ということでシリアスな衝撃を与える作品もあるけれど、犯罪計画がとんでもない方向へ発展していくノリに、映画の面白さを実感できたりする。本作はまさにそんな一本として、エンタメ的に楽しませる痛快犯罪ムービーだ。 このパターンの近年のヒット作で思い浮かぶのは『オーシャンズ』シリーズ。同作で共演したマット・デイモンとケイシー・アフレックが、この最新作でもタッグを組んだ。しかもマットはプロデューサー、ケイシーは共同脚本で作品に深く関わっている。幼なじみでもある2人なので、その親密さが作品にも刻印され、観ているこちらも何だかハッピーな気分にさせるのだ。ボストン市長が選挙戦のために不正に集めた大金。その存在に気づいた裏組織の男が、強奪計画を立てて協力者を集める。家族との問題で大金を必要とするローリー、前科者のコビーが加わるが、彼らは犯罪に関してはシロウト。しかも市長の金庫に行き着くまでに、計画とは違う状況が次々に発生し、ローリーとコビーは警察および組織に追われる立場になってしまう。 監督を務めたのは、『ボーン・アイデンティティー』でマット・デイモンにアクション俳優としての才能を開花させたダグ・リーマン。『Mr.&Mrs.スミス』、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』なども手がけた彼らしく、カーチェイスや銃撃、爆発など要所のシーンを、ド派手&緊迫感たっぷりに見せていく。犯罪計画自体が穴だらけ(だからこそ映画としては面白い!)にもかかわらず、アクションはスーパー級というコントラストが妙味だ。マット・デイモンは『ボーン』シリーズとはうって変わって、頼りないキャラに没入。こっちもマット“らしい”とホッコリさせる。『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でオスカー俳優となったケイシー・アフレックも、そんなマットとのやりとりを喜んで演じているようで微笑ましい。タイトルにあるセラピスト役が、このところ出演作にハズレなしのホン・チャウだったりと、まわりのキャストもインパクト大。そしてターゲットとなる市長のビジュアルが、アメリカ大統領選を控えた“あの人”を連想させるなど、思わぬ発見も多い一作だ。 Apple Original Films『インスティゲイターズ 強盗ふたりとセラピスト』8月9日配信 製作ベン・アフレック 製作・出演/マット・デイモン 監督/ダグ・リーマン 脚本・出演/ケイシー・アフレック 脚本/チャック・マクリーン 出演/ホン・チャウ、 マイケル・スタールバーグ、ヴィング・レイムス 配信/アップルTV+ 2024年/アメリカ/視聴時間101分
取材・文/斉藤博昭 text:Hiroaki Saito