「実用性? フンっ!」って鼻で笑えるムダこそ美学! シューティングブレークがある意味クルマ界一の贅沢モデル!!
5ドアモデルにも「シューティングブレーク」がある
当然、イギリス車だけでなく世界中のメーカーがシューティングブレークの商業的な可能性に気づくことになり、ひところは結構な数のモデルが生まれています。例えば、ホンダ・アコード・エアロデッキなどはシューティングブレークと名乗りこそしませんでしたが、XJ-Sに負けず劣らずスタイリッシュなもの。ややもすると間延びしたシビックになってしまいそうなところを上手にまとめ、ブーム的な人気まで勝ち得ていました。 エアロデッキほどの人気は出なかったようですが、日産EXAキャノピーもまたシューティングブレークを再解釈したモデルといっていいでしょう。キャノピー部のガラスエリアを広くとったところなどは、アストンマーティン・ラゴンダ・シューティングブレークに共通したアイキャッチで、現在でも通用するデザインに違いありません。 デザインという視点からいえば、BMW Z3クーペやミニ・クラブマンもルーフを後方に延長したスタイルから、シューティングブレークと呼ぶこともあるようです。 こうして並べてみると、やっぱり2ドアワゴンというのは実用性よりもスタイルを優先していると気づかされます。とにもかくにも、最初に植え付けられた貴族的なイメージが効いていることだって否めません。「実用性だと? 馬のエサにもならんよ」などと強がっているのが目に浮かぶようです(笑)。 ところが、本来の2ドアワゴンでない5ドアワゴンにもシューティングブレークと紐づけさせたモデルも登場しています。それって普通のワゴンじゃね、と突っ込みたくなるのがポルシェ・パナメーラやジャガーSタイプ・エステートといったセレブ向けワゴン。シューティングブレークをイメージさせる販売戦略とはいえ、実用性を犠牲にしてでもスタイルを作り上げてきた2ドアワゴンたちに失礼じゃないかと(笑)。 もっとも、クルマ業界こそ世知辛いものですから、見当違いなネーミングであっても、売れるに越したことはないのでしょう。
石橋 寛