英総選挙 勝ち切れなかった労働党と二大政党制の空洞化
保守・労働・SNPの新しい三党政治
保守党の単独過半数という結果だけをみれば、保守、労働の一騎打ちの政治は今でも健在である。だが、2015年の総選挙は、20年弱のこれまでの英国の三党政治の一角を担ってきた自民党の壊滅的後退と、スコットランド国民党の著しい躍進を同時にみる結果となった。保守、労働、SNPによる新しい三党政治の出現をみる結果であった。 選挙戦に注目すれば、多党化の流れもはっきりとみられた。テレビの党首討論会は初めて七党が参加するものであった。各選挙区についてみれば、上位二位の候補者の所属政党が保守党と労働党でない選挙区は多い。二大政党が今後全国の支持を二分することがはたしてできるのかどうか。確かに今回、二大政党の一角を担う労働党の敗北が保守党の単独過半数をもたらしはした。その意味で二大政党制は健在である。だが、二大政党制の空洞化は着実に進行している。 (成蹊大学教授・高安健将)
■高安健将(たかやす・けんすけ) 成蹊大学法学部教授。専門は比較政治学・政治過程論。Ph.D. (Government) University of London.著書に、『首相の権力―日英比較からみる政権党とのダイナミズム』(創文社)など