「町内会費で飲み会はおかしい」抗議した夫が吊し上げの理不尽。政治家のカネには激オコなのに、足元の不正にはユルすぎる「日本社会の闇」
「この地域にはまだ10年程度しか住んでいない私たちですが、昨年度は夫が町内の会計係を任されたんです。会計係は10年以上住んでいる人の中から選出される慣習があるとかで、早速任命を受けた形でしたね」 班の会計業務を担うなかで、夫は町内会費のあり方に対し関心を深めることとなった。そして徐々に町費値下げを目指すに至ったが、結果としてそれは叶わなかったという。また、町費値下げを提案する前にも、夫は会計を担当した一年間、古参住民と何度もバトルを繰り広げたのだそうだ。 「末席ではありますが、夫は役員会でメンバーの人たちと交流するようになって初めて幹部の食事会や飲み会が異常に多いことや、そのための費用がほとんど町費から出ていることを知ったと言うんです」 ゆりえさん夫婦は、それまでの自分たちの無関心を心から反省した。 「一般会員の時には、総会での会計報告も聞き流しているだけでした。ちゃんと関心を持たなかった自分たちがいけませんが、まさかこれほど一部の人の飲み代に消えているとは想像もしていなかったんです」 幹部役員は高齢層の同じようなメンツが順番に繰り返し就いているため、一部の長老だけが「町の税」で甘い汁を吸い続けているというわけだ。町費の使い道という意味では明らかに不平等なのだが、町内では「役をやってもらうのだから労いはあたりまえ」「役得」などという考え方がまかり通っている。 「もちろん、町内会館修繕費の積立とか、敬老会や行事に使うお金とか、正当に使われているものもあります。でも、飲食代は誰が見ても過剰な額だったそうですし、タクシー代まで計上されていたようなんです。夫も最初のうちは黙っていたけど、徐々に意見を言うようになり、自ずと爺さん連中と対立することに……」 町費の使い方に不満をこぼすも、町内に古くから続く考えや慣習は根深い。ゆりえさんの夫は状況を変えることはできるのか。後編に続く。 取材・文 中小林亜紀