学術が目指すべき社会と人類の行く末 小惑星を利用する時代は文明の大転換
「うつつを抜かすマネジメントは変わるか引退を」
人工知能やビッグデータは、「教育」にどのような変化をうながすのか。「イノベーション、科学技術と教育」では、元文部科学相の自由民主党の下村博文特命担当副幹事長と、ヤフーの安宅和人CSOが登壇し、人工知能やビッグデータが存在感を増しつつある時代における教育のあり方を議論した。 安宅CSOは、現代が「情報産業革命」という産業革命以来の歴史的な局面にあると説明。「人工知能は人間を代替するのではなく、幅広く手助けする存在になる」と説明したほか、戦略・戦術面で意思決定の質とスピードが上がるなど、人工知能とビッグデータがビジネス面に大きな変化を与えるとした。 下村特命副幹事長は、「情報産業社会では、従来の暗記中心の教育ではなく、主体的に自ら解決する能力、創造・企画する能力、人間的な感性・感覚を育む教育が求められる。今の大学入試試験ではそれを判断できない」と、教育改革の重要性を強調した。 安宅CSOは、「小・中・高の段階で、データリテラシーを叩き込むべき」と主張するとともに、情報工学やコンピュータサイエンスに携わる研究者不足などの問題点を指摘。また、「数百年来の大きな変化が訪れているのに、ミドル層やマネジメント層には興奮がない。これらの層がうつつを抜かすと遅れてしまうので、変わるか、さもなくば引退しなければならない」と奮起を促した。
「小惑星を利用する時代が来れば、文明の大転換になる」
将来、月や小惑星など地球外の資源にスポットが当たる時代が来るかもしれない。「地球外資源」では、東京大学総合研究博物舘の宮本英昭准教授が地球外資源の可能性を、慶応義塾大学大学院法務研究科の青木節子教授が関連する国際法をそれぞれ説明した。 隕石の正体はつい最近までわかっていなかったが、宮本准教授によると、隕石が小惑星の破片だと証明したのは、2010年に地球に帰還し、小惑星「イトカワ」の微粒子を持ち帰った小型探査機「はやぶさ」だという。 宮本准教授が着目するのは、地球の比較的近くに軌道がある近地球型小惑星。イトカワタイプの半径1kmの小惑星なら、現時点の価値で15兆円分に相当する7500トンの白金族元素が含まれると説明。「いつになるかわからないが、こうした小惑星を利用する時代がくれば、産業革命に匹敵する文明の大転換になる」とした。 青木教授によると、国際的な条約で地球外資源に関係しそうなのは、国家による天体の領有を否定する「宇宙条約」と、国や個人などあらゆる者による月の土地の所有を禁じる「月協定」の2つ。宇宙条約には資源採取に関する規定がなく、月協定は自由競争による資源開発を禁じている。 米国では昨年、米国企業および個人による地球外資源の発見と開発を認める「商業宇宙打上げ競争力法」が成立した。日本でも同様の法は制定できるか。青木教授は、「理屈としては可能だが、『誰かが小惑星資源をどんどん地球に持ち帰って、規則がないから困るという状態にならないと動けません』といって政府は何もしないと思う」と苦笑した。 (取材・文:具志堅浩二)