学術が目指すべき社会と人類の行く末 小惑星を利用する時代は文明の大転換
学術が目指すべき社会と人類の行く末を「フロンティア」と位置づけ、サイエンスとアートの役割について議論する日本学術会議の公開シンポジウム「フロンティアを目指す、サイエンスとアート」。2日目の28日も、「人工知能 自動運転と未来社会」、「イノベーション、科学技術と教育」、「地球外資源」など、幅広いテーマでトークセッションが行われた。
人工知能による小説は「ある水準のものは作れる」
セッション「人工知能 自動運転と未来社会」では、無人タクシーの実現を目指すZMPの谷口恒社長と、人工知能による小説作成に取り組むはこだて未来大学 複雑系知能学科の松原仁教授が登場し、取り組みを紹介した。 ZMPは昨年、DeNAと合弁会社「ロボットタクシー」を設立。今年2月には神奈川県藤沢市で、一部の区間のみ自動で運転するロボットタクシーの実証実験を実施したところ、「(手動運転から自動運転に)切り替わったことに利用者が気づかないほどスムーズな制御が行えた」と谷口社長は胸を張った。今後、さらに実証実験を重ね、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年の運行開始を目指す。 松原教授の研究グループは昨年、文学賞の第3回日経「星新一賞」に人工知能を用いて作成した小説を複数応募したところ、1次審査を通過した作品が現れて話題となった。ストーリー構成などの材料はある程度人間が考え、それらをもとに小説を生成する作業を人工知能が担当したが、今後は人工知能に任せる部分を増やしていく方針。松原教授は、「ある水準のものは作れると思う。将棋も囲碁も、最初は絶対できないとみんな言っていたが、どれも実現している」と自信を示した。 人工知能ブームは、今回が3回目。松原教授は、「2回目は一般の人に届くところまでいかなかった。今回は少なくともブームが終わっても真冬の時代にはならないと思う」と述べる一方、「ディープラーニングですべてが解決するというような一種の幻想があるが、過大な期待」と釘を刺した。