地域医療支えた「かご」 山形の金沢さんが市に寄贈、郷土館に展示
山形市内の旧家に保管され、江戸後期から明治初期に人を運ぶ乗り物として使われていた「かご」が、市に寄贈された。寄贈した金沢一男さん(77)の先祖だった医師が往診に出向く際に使っていたとみられ、保存状態も良好。市は約200年前のかごの寄贈を受けるのは初めて。同市郷土館(旧済生館本館)内に地域の医療現場で使われた、重要な史料の一つとして展示されている。 金沢家では10代目(1800~1857年)と11代目(1830~1886年)が「金沢理仲(りちゅう)」として医者を務めていたとされ、当時使っていたものだという。一男さんは17代目。1970(昭和45)年ごろに市に調査してもらったこともある。これまで蔵に保管してきたが、「多くの人の目に触れる場所に置いてほしい」と市に相談し、寄贈することが決まった。 県立博物館によると、県内では展示している資料館などはあるが、実際にどのように使われてきたかが、大きな意味を持つという。当時の身分や冠婚葬祭などで、異なる形状のものが使われ、箱型の乗用部を棒につるし、複数人で運ぶ乗り物として江戸時代に普及した。明治期に道路が整備され人力車に代わると多くは姿を消したが、死者を運ぶかごは、昭和まで残っていた所もあるという。
寄贈されたかごはキリ製で、左右、前部の小窓には竹すだれがかかり、側面は畳表で覆われている。担ぎ棒は軽くするため、中心部がくりぬかれている。出入り口は引き戸。乗り心地を考慮してか、内部には肘置きや背当てが備えられている。 市の担当者は「保存状態も良く立派なもので、地域医療を支えてきた歴史を知る上で貴重だ」と話した。金沢さんは「先祖が使っていた貴重な品をたくさんの人に見てもらい、有効活用してほしい」と話している。