今後どう転ぶのか? 謎めいていて魅惑的、松下洸平演じる周明にSNS熱視線【光る君へ】
平安時代の長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を、吉高由里子主演で描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。6月2日放送の第22回「越前の出会い」では、越前編のキーパーソンとなる、松下洸平演じる周明が活躍。まひろの新しいときめきを予感させたかと思うと、とんでもない大事件とどんでん返しが起こるという、初手から大波乱の回となった(以下、ネタバレあり)。 【写真】突然日本語を話し始めた周明(松下洸平) ■ まさかの通事殺人事件! 越前編が波乱の開幕 宋(中国)人たちが留め置かれた「松原客館」を訪れたまひろと父・為時(岸谷五朗)は、商人の朱仁聡(浩歌)らの歓待を受ける。翌日国府に到着した為時は、越前介の源光雅(玉置孝匡)から、政を自分たちに任せるようにと賄賂を送られる。それを拒否した為時だが、役人たちが協力しなくなったために激務を背負うことに。胃痛で倒れた為時に、朱から薬師・周明(松下洸平)が差し向けられ、鍼治療で回復することができた。 そんななか、朱が通事の三国若麻呂(安井順平)を殺した罪で捕縛される。下手に扱えば宋との外交問題になる事例のため、まひろは為時に変わって、左大臣・藤原道長(柄本佑)に文を送るが「越前のことは越前でなんとかせよ」という、そっけない返事しか戻ってこなかった。そこに周明が「朱様は通事を殺していない」と、無実を証明する証人を連れてくるが、その流量な日本語に、まひろと為時は目を丸くするのだった・・・。
実際の事件を巧みに膨らませた脚本に拍手
都から地方への転居は、今でいうと海外赴任レベルで、環境や生活がガラリと変わるものだった。この22回から始まった「越前編」も、宋人たちのめずらしい食や文化に触れたり、腐りきった地方行政の内情が明らかになったりと、一気に物語の色が変わった。 そしてここでの生活は、当然まひろの文学性に大きな影響を与えるわけだが、まさか「通事殺人事件」なんて、火曜サスペンス劇場(日曜だけど)みたいなことが起こるとは想像もしていなかった。さらにそこに、完全に宋人だと思われた周明が、ネイティブな日本語をしゃべりだし、SNSは「日本語しゃべれるんかーい!」と総ツッコミ状態となっていた。 と、かようにサービスとエンタテインメント精神にあふれまくった内容ながら、実は当時大勢の宋人が越前に留め置かれたことや、朱仁聡という商人がなんらかの罪を犯した疑いで、朝廷で問題になったことなど、今回もまた実際の事件を巧みに膨らませた脚本ではあるのだ。そして都の外に物語の舞台が移ったことで、教科書では教えられなかった平安時代の負の部分がつまびらかになったのも注目点だ。 国司は実際の政は現地の役人たちに丸投げし、彼らの所業を見て見ぬふりをする代わりに賄賂をもらったり、為時の友人・藤原宣孝(佐々木蔵之介)のように独自の商売を初めて私腹を肥やす者が多かった。 宣孝ぐらい清濁あわせ呑む人物なら楽しく財テク暮らしを送れるだろうが、クソ真面目一直線なうえに使命感に燃える為時パパには、絶対に暮らしづらい社会だろう。そしてこの地方行政の不全が、平安貴族の世が鎌倉武士の時代に移行する大きなきっかけの一つとなるのだが、それはまだしばらく先の話である。