史上もっとも後味の悪い日本映画は? 鑑賞注意の鬱邦画(2)人身売買がヤバい…衝撃すぎる主人公の裏の顔とは?
なぜ人は悲劇を愛するのか。この問いに、哲学者アウグスティヌスは『告白』で次のように答えている。「人は誰でもみな、自分では不幸になりたくないが、他人に憐みをかけることは喜ぶ。(…)そのために悲しみを愛するのだ」―。今回は私たちの憐みを引き出す「鬱な日本映画」をセレクト。比較的近年の作品を中心に紹介する。第2回。※この記事では物語の結末に触れています。(文:村松健太郎)
●『闇の子供たち』(2008年)
監督:阪本順治 脚本:阪本順治 出演:宮崎あおい、妻夫木聡、江口洋介、佐藤浩市、鈴木砂羽 【作品内容】 日本新聞社バンコク支局に駐在中の南部(江口洋介)はある日、東京本社からタイの臓器密売の調査を依頼される。一方その頃、恵子(宮崎あおい)は、ボランティアとしてバンコクの社会福祉センターへの赴任が決定した。 彼女はセンターの所長から、最近顔を見せなくなったスラム街出身の少女の話を聞く。調べていくうちに、彼女は父親に売春宿に売り飛ばされていたことが判明する。 【注目ポイント】 1973年に起きた金大中氏拉致事件に材をとった『KT』(2002)や『亡国のイージス』(2005)など、骨太の社会派映画にも定評のある阪本順治。そんな彼がタイの闇社会の人身売買をテーマとした梁石日の同名小説を実写化した作品が、この『闇の子供たち』だ。 主人公のジャーナリスト南部を演じるのは江口洋介。他にも、宮﨑あおい、妻夫木聡、佐藤浩市ら、日本の映画界を代表する豪華キャストが名を連ねている。 本作は、江口演じる南部と宮崎演じる恵子が、タイで横行する人身売買を追跡する様子を描いていく。売買された子供たちは心臓をはじめとする臓器移植に利用される。作中では、日本の富裕層がタイの子供の臓器を購入しようとする描写がある。同じことが現実で起きているのかどうか、真偽はわからず、作中の描写全てが真実であるとは限らないようだ。 そうしたこともあり、バンコク国際映画祭では、「タイのイメージを極端に損なう作品」として上映が中止になっている。そういった意味では、むしろ、「ドキュメンタリーをもとにしたフィクション」と割り切って観るのが正解だろう。 さて、そんな本作の見どころは、ラストにある。追跡中に自ら命を絶った南部。後日、妻夫木演じる助手が彼の遺品を整理していると、南部が幼児売春をしていたと思しき写真が見つかるのだ。 真実は、善悪は、一体どこにあるのか―。衝撃のラストから、思わずそう感じざるを得ない。 (文・村松健太郎)
村松健太郎