CMO 職は再定義されるべきなのか? 存在の肯定派と否定派の意見を探る
CMO否定派の意見
CEOやCFOと異なり、CMOの役割は必ずしも不可欠ではないかもしれない。一部のフォーチュン500(Fortune 500)企業では特にそうだ。実際、フォレスター・リサーチ(Forrester Research)の調査によれば、CMOを置いている企業は全体の3分の2(63%)に過ぎなかった。つまり、多くの大企業にとって、CMOはなくても困らない贅沢品というわけだ。 また、役員会でマーケティング担当者の席が用意されていたとしても、その席にCMOが座るとは限らない。 現実には、企業はマーケティング幹部に対して、従来のCMO以上の役割を求めるようになっている。今日のマーケターは、リテールメディア事業の管理や社内のプライバシー対策の指揮はもちろん、場合によってはM&A戦略への貢献まで期待されている。かつてないほどの多才さが求められるようになった今、従来のCMO職では不十分なのかもしれない。 ヒョンデの最近の動きは、このようなトレンドを象徴している。同社の経営陣はCMO職を廃止し、最高クリエイティブ責任者とマーケティングパフォーマンス担当バイスプレジデントを新たに任命した。その理由は単純明快だ。マーケティングが複雑化するにつれて、スイスアーミーナイフのような多機能ツールではなく、専用ツールが必要になることがある。 彼らのような企業にとって、「何でもこなすスペシャリスト」としてのCMOはもはや時代遅れなのだ。
CMO職を再定義
それでも、こうした動きはCMOの役割を完全に否定するものではない。現代のマーケティングが協調的で部門横断的なアプローチを必要とし、成功がひとりの著名なリーダーではなく専門的な知識や戦略的な調整に左右されるという現実を反映しているのだ。 そのため、P&Gのマーク・プリチャード氏、ユニリーバのキース・ウィード氏、ゼネラル・エレクトリック(General Electric:GE)のリンダ・ボフ氏など、オンラインマーケティングの隆盛期にメディアに精通し、ソートリーダーシップを発揮したことで知られるスターCMOの時代は、ますます過去のものとなりつつある。 今日、マーケティングにはより専門的なスキルと幅広い戦略的展望が求められる。そのため、企業はCMOの役割を、CCO(最高顧客責任者)、CGO(最高グロース責任者)、CSO(最高戦略責任者)、CDO(最高デジタル責任者)などの役職で補完したり、置き換えたりするようになった。なかには、画一的なCMOではもはや対応できない特定の成長ニーズやマーケティングニーズに合わせて、地域別のCMO職や限定的なCMO職を導入する企業もある。 そして、あらゆる大きな変化と同様、その過程である程度の混乱や調整は避けられないだろう。 「CMOはもはや必須の存在ではない」と、フォレスターでバイスプレジデント兼主席アナリストを務めるイアン・ブルース氏は言う。「この世界では、上級マーケティング担当者の役割の規模や範囲が大きく変わる可能性があり、CEOはそのことを理解し始めている。彼らは『マーケティングは死んだのでCMOは不要だ』と言っているわけではない。むしろ、マーケティング全般にとって合理的な役割、機能、責任は何か、それを効果的に管理するにはどうすればいいのかを理解しようとしている」。 結局のところ、CMOを否定する理由はCMOの役割を細分化する理由でもある。CMO職を段階的に廃止したり転換したりする場合でも、企業はCMO職を捨て去るわけではなく、より機敏で繊細なマーケティングの専門知識が求められる世界に合わせてCMO職を再定義しているのだ。 [原文:The cases for and against the CMO role] Seb Joseph(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:島田涼平)
編集部