1年延期の東京五輪サッカー代表出場資格が「23歳以下」から「24歳以下」へ特例変更の方向…新型コロナ退院の日本サッカー協会・田嶋幸三会長が明かす
中山ら選手たちからも戸惑いや状況を不安視する声があがっていたなかで、田嶋会長は「1998年1月1日以降に生まれた選手」を持論として推した。その意図をウェブ会見でこう明かしている。 「これはヨーロッパでプレーする選手が多い日本にとって、1歳上がることによって、クラブがよりリリースしづらくなる、ということを想定したからです」 1997年生まれ組では中山以外にもDF板倉滉(FCフローニンゲン)、MF三好康児(ロイヤル・アントワープFC)、FW前田大然(CSマリティモ)らが海外でプレーしている。年代別代表に対しては各国協会は招集に拘束力をもたないため、2021年を迎えて24歳となり、主力としての立場がさらに固まれば、クラブ側が東京五輪へ選手を派遣しなくなるのではないか、と田嶋会長は考えたのだろう。 要は海外組を招集しやすい状況にするためにも、年齢のハードルをさげておくという考え方である。しかしその後、アジア代表として東京五輪への出場を決めているオーストラリアや韓国が、特例で24歳以下にあらためてほしいという声を公に発した。 田嶋会長は「まだ最終的な決定はなされていない」と前置きしたうえで、一連の動きを受けての現状をこう語っている。 「その後にFIFAなどと話しているなかにおいては(年齢制限を)24歳に切り上げて、予選を突破したチームがそのまま参加するということに落ち着くのではないかと言われています」 年齢制限問題については、FIFAの判断のもとで一定の方向性が見えたと言っていい。対照的に今後の動向が不透明になりつつあるのが、東京五輪代表チームを率いる森保一監督(51)だ。フル代表の指揮官を兼任するなかで、五輪代表監督としてのJFAとの契約が今年8月に切れるからだ。
疫病の蔓延による東京五輪の延期という事態そのものが、まったくの想定外だったことによってもたらされた問題と言っていい。しかし、この点について田嶋会長は問題なしを強調した。 「東京五輪までの契約をしているわけであって1年延びたということにおいて、自分としては契約自体がまったく白紙に戻るものとは思っていません」 要は東京五輪が延期されれば、契約も自動的に延長されるという考え方である。ただ、新型コロナウイルスは開催中のカタールワールドカップ・アジア2次予選にも大きな影響をもたらしている。2試合が延期となった3月シリーズに続いて、同じく2試合が予定されていた6月シリーズも延期されることが、1日の段階でJFAから発表されている。 新型コロナウイルス禍が終息する兆しすら見えないなかで、当然ながら代替日程もまだ決まっていない。しかし、対戦各国と大きな実力差があり、4戦無敗で首位に立っている2次予選を勝ち抜いた先に待つ最終予選はひと筋縄ではいかない強敵や難敵がそろい、なおかつ日程が延期された東京五輪へ向けた強化スケジュールと完全に重複する。兼任監督体制の継続は物理的に不可能となった。 森保氏は2017年秋に東京五輪代表監督に就任し、ロシアワールドカップ後の2018年夏にフィリップ・トルシエ氏以来となるフル代表との兼任監督となった。サッカー界、特に代表チームを取り巻く状況が「そのときとは変わっている」と認めたうえで、田嶋会長はこんな言葉を紡いだ。 「逆に言えば東京五輪が1年延びたことによって、どうしても2つの代表チームを兼任できない、というような厳しいスケジュールになるのであれば技術委員会がしっかりと議論して、決めてもらえればいいと思っています。もちろん森保監督の意思もありますし、ワールドカップ予選そのものがどのようになるのかもまだわからない。そうした状況で、いますぐにいろいろな人事を議論するというのは、僕としてはちょっと早いかな、という気がしています」