体に必須のミネラルだが、健康食品で知らずにとりすぎて重篤な障害が起きている
記載通りに摂取しても発生するケースが
【セレン】糖尿病発症率がセレンのサプリメントで上昇 金属元素のセレンもクロムと同じく体にとっては欠かせないが、毒性の強い金属である。中国の黒竜江省克山県に、住民が突然の心停止を起こす疾患があり、その原因がセレンの欠乏であることが判明した。 その後セレンの研究が進み、生体内で多くの働きをしていることがわかっている。たとえば体内の解毒機能の重要な物質グルタチオンの代謝に関連していたり、抗酸化物質として重要な働きがあったり、甲状腺の機能を正常化したりすることも判明している。 そこでセレンを補給するための健康食品が販売されたが、過剰摂取による健康障害が発生した。食品安全委員会による障害の報告を見ると危険なものもある。 「慢性的な過剰摂取により、爪の変形や脱毛、胃腸障害、下痢、疲労感、末梢神経障害、皮膚症状などがみられ、多量にとると重度の胃腸障害、心筋梗塞、神経障害、急性の呼吸困難、腎不全などが起こる。また、耐容上限量未満であっても食事からのセレン摂取量が充足している集団が、200g/日のセレンサプリメントをとり続けた場合、糖尿病発症率が上昇する」との報告である。 東京都健康安全研究センターが市販のサプリメントのミネラルの含量について調べて、「セレン含有のサプリメント28製品のうち22製品で摂取目安量が推奨量(18歳以上の男女では25g/日)を超えており、1日当たり200g近い含量の製品もあったとされている」(2006年、2007年)と過剰摂取に対して警鐘を鳴らしている。 ここで注意しなければならない健康食品の問題として、医薬品のようにしっかりした品質管理で健康食品は製造されていないために、機能性素材が過剰に入っていることが、特に微量で効果がある素材でよく見られる。 クロムやセレンの過剰摂取と同じく、健康食品のパッケージに記載されているとおりに摂取していたにもかかわらず、発生していたケースが大半である。くり返すが、これは食品安全委員会の調査報告にもあるとおり、必要量以上の含量であるため、毒性の強いこのような素材の場合なおさら事故となるのである。