東大理三日本一、灘の現役教師が考える「国語力」の育み方
日本の国語教育が大きな転換期を迎えている。学習指導要領の改訂をきっかけに入試では文章量が増え、論理的思考力が試されるなど、あらゆる教科で「国語力」が問われている。今なぜ「国語力」が重視されるのか。 灘中学校・高等学校 国語科教諭の井上志音氏
編集長・加藤紀子連載「今、会いたい人」第3回のゲストは、灘中学校・高等学校 国語科教諭の井上志音氏。国際バカロレア(IB)を踏まえた教科教育学を専門とし、大学でも教鞭をとるほか、NHK高校講座「現代の国語」(Eテレ)や「論理国語」(NHKラジオ第2) に出演するなど、精力的に国語教育に携わっている。
3月には、井上氏と加藤が共著『親に知ってもらいたい国語の新常識』(時事通信社)を上梓。転換期の国語教育の現状や、国語力の育み方について対談を繰り広げた。
転換期の国語教育、何が変わったのか
加藤:今、日本の国語教育は大きな転換期だと言われていますが、世間ではまだその事実がほとんど知られていません。まずは国語教育の専門家である井上先生から、何が大きく変わっているのか、ご説明いただけますか。
井上氏:「転換した」と聞いてもピンとこない保護者は多いと思います。というのも、国語のテストは相変わらず「次の文章を読んで後の問いに答えなさい」から始まっていますし、教科書も『ごんぎつね』のような一見昔とあまり変わらないラインアップで、変化を体感しにくいからです。
でも、実際には目に見える変化も起きている。それは、教科書が分厚くなっていることです。
なぜ分厚くなっているのか。それは、教材を使って何かやってみようというページが増えているから。「読むこと」「書くこと」「話すこと/聞くこと」の言語活動を充実させるように学びが広がっているんです。
加藤:それは良い方向に向かっているように聞こえますね。
井上氏:これまでの国語教育が扱ってきた国語力の「狭さ」が露呈したからでしょう。与えた文章をただ読み込むだけでは社会で通用しない。社会で生かせる力を培いきれていなかったという反省から、扱う範囲が広がったのだと思います。