女性研究者が注目する“技術革新”使いこなすべきテクノロジーとは?
きらびやかなクリスマスのイルミネーションを満喫し、今年も除夜の鐘の音が近づいてきました。日々の研究を通じて、テクノロジーの進化のスピードに驚かされることが多くあります。今回は、2024年に私が特に注目したテクノロジーを五つ紹介します。 学生時代にあったら便利だったと思う、日々の研究活動に不可欠となった技術や宇宙関連のトピックをピックアップしました。テクノロジーというと、なにやら小難しそうなイメージがあるかもしれませんが、車やスマホのように、将来、日常生活に欠かせないツールとなる可能性もあります。参考にして、ぜひ試してみてください。 【1】画像生成AI テキストにしたがって画像を自動的に生成してくれるAIです。与えられた情報に応じてイラストや絵などの画像を創り出すことができますが、「疲れた人の秘密基地」と打ってみたらなぜか鳥の巣が出てきたこともあり、まだ発展途上の技術です。 背景を変えてみたり、空想上の惑星を描いてもらったり、楽しみながら慣れ親しむことができます。商品開発やPR、アニメ、エンタメなど身近な分野で活用が期待されるため、今のうちから使い慣れておきたいテクノロジーの一つです。 【2】自然言語処理AI 日常的に使っている言葉(自然言語)をコンピューターが理解し、処理する技術です。質問への回答、文章の要約、翻訳などが可能で、最近ではプログラミングでも、病院を探す場合でも、まずはググるよりChatGPTに聞くようになりました。 私のひいおじいさんが昔、青銅器を作る職人だったと聞き、ChatGPTで尋ねてみたら、作品を展示している博物館の情報まで教えてくれました。多言語への通訳、会話による指示や質問に応じるなど、すでに日常生活で活用が広がっています。対話をすることで、自己理解を深めるのにも利用できます。 ただし、情報をうのみにしてはいけません。真偽を判断する能力が求められます。「根拠を教えて」や「論文を参照して」と尋ねると、より信頼性の高い情報を得ることができます。 【3】月より遠い距離からの光通信 アメリカ航空宇宙局(NASA)は2024年7月29日、月や太陽よりも遠い約4億6000万km離れた小惑星探査機Psyche(サイキ)にレーザー信号を送信し、レーザー通信の新たな記録を樹立しました。家庭でも使われている光通信は、宇宙でも大活躍し始めています。光通信は、従来の無線通信と比べて、大容量で高速なデータ転送が可能ですから、月面にいる宇宙飛行士がYouTubeを見られる日が近づいているのですね。 【4】H3ロケット打ち上げ成功 H3ロケットの打ち上げ成功は、日本の宇宙開発にとって重要なマイルストーンでした。2023年に1号機の打ち上げに失敗しましたが、2024年2月に2号機の打ち上げに成功。7月には地球観測衛星「だいち4号(ALOS-4)」を搭載した3号機が無事に打ち上げられました。 この成功は、技術者たちの努力の成果であり、成功が当たり前でない宇宙開発の難しさを教えてくれる事例でした。私自身も「だいち4号」に関わるプロジェクトに参加していたため、打ち上げの成功は非常に感慨深かったです。本当にお疲れさまでした! 【5】木でできた世界初の衛星 世界初の木造衛星「LignoSat(リグノサット)」が2024年11月に打ち上げられました。京都大学と住友林業が共同開発したこの衛星は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が用意した特殊コンテナに搭載され、米宇宙企業スペースXのロケットによって、米ケネディ宇宙センターから打ち上げられました。 ホオノキ材を使用しており、環境負荷を軽減する持続可能な技術を検証するため、国際宇宙ステーション(ISS)から放出。元宇宙飛行士の土井隆雄さんの監修のもと、木材という持続可能な素材を宇宙開発に利用するという新しい試みです。軽量で環境に優しく、廃棄時の宇宙ゴミ問題を軽減する可能性を秘めています。持続可能なテクノロジーの象徴的な出来事だと思います。 振り返ってみると、2024年は石川・能登半島地震や羽田空港の日本航空機衝突事故などの悲しい出来事で始まり、大谷翔平選手やパリ五輪・パラリンピックでの日本人選手の活躍、新紙幣の発行、衆院選などさまざまなことがありました。技術の進歩が事故や災害の被害を抑え、日々の生活を豊かにすると信じ、2025年も研究に励みたいと思います。 (宇宙工学エンジニア 小仲美奈)