「2025年注目テーマ」総まくり、永濱利廣さんが株式相場で勝ち抜くための要点を徹底解説
アメリカでインフレが急加速すれば、連邦準備制度理事会(FRB)は連続利下げどころか利上げ再開との思惑が広がり、日米金利差拡大観測から円安・ドル高に振れる可能性がある。円安が進行すれば、日本の輸入物価も押し上げられることになろう。 ■1%まで利上げしたい日銀 Q 日銀は今後も金利引き上げを続けるか? 景気を刺激するでも抑制するでもない「中立金利」という考え方がある。日銀が想定する中立金利は最低で1%程度と推察され、今年3月のマイナス金利解除に始まる金融正常化路線が来年も続きそうだ。
日銀は明らかに円安抑制を意識しているが、日銀の政策目標は持続的な物価上昇率2%。「円安だから利上げして円高にする」とは口が裂けても言えない。ステルス為替ターゲット政策だ。 一方、トランプ関税が景気に急ブレーキをかける可能性がある。本音では、日銀は早期に政策金利を1%まで上げたいのだろう。最速で、来年末までに1%まで利上げする可能性がある。日米の金利差が縮小すれば、為替は円高に動く。来年末のレートは1ドル=140円台がメインシナリオだ。
Q 国内景気や物価、賃金はどうなる? 最大のリスク要因はトランプ関税だ。トランプ氏は第1次政権下の2018年3月、自動車部品や電気製品などを対象に対中関税強化をぶち上げ、中国が米国製品に報復関税を課すなど貿易対立が激化。そのあおりで日本は11月から景気後退局面に入った経緯がある。 前回は中国経済に勢いがあったが、今の中国は景気対策を連発しても景気停滞から抜け出せないでいる。アメリカの高関税政策が中国や日本を巻き込み、世界景気が急速に冷え込むリスクがある。日本では、追加関税の状況次第で景気後退が始まる可能性もある。
もっとも、暗い話ばかりではない。来年は賃金上昇率から物価上昇率を引いた実質賃金が安定的なプラスに転じる可能性がある。国内では、人手不足から賃金上昇圧力の高い状態が恒常化し、来年も賃上げの流れが続きそうだ。一方、物価上昇率は落ち着く方向にあり、2%を下回るかもしれない。 Q 望ましい経済政策の方向性は? 実質賃金のプラス転換が実現するだけでは、消費は増えないだろう。マクロ賃金(雇用者報酬)と消費(家計最終消費支出)の関係では、2015年にマクロ賃金が1%増えると消費が1.4%増えたが、昨年は0.7%しか増えない関係にある。賃金増加の消費刺激効果が10年足らずで半減したのだ。3分の1が年金のマクロ経済スライドの悪影響を受ける無職世帯なので、節約志向を覆すのは容易ではない。