日産がキャンピングカー業界に一石! 標準モデルとして作った「車中泊車」に注目 ウッディな内装も魅力の「キャラバン・マイルーム」
自動車メーカー製では何が違う? メリット・デメリット比較
従来のようにキャンピングカービルダーが作るのと、自動車メーカーが作るのとでは、どこがどう違うのでしょうか。相変わらずのキャンピングカー人気に各自動車メーカーも注目し、さまざまに研究は進んでいるでしょう。そこで私が実車を取材して感じたことをご紹介しましょう。 まず感じたのは、シートがオリジナルだったり、跳ね上げベッドのヒンジがダンパー式だったりと、とにかく手の込んだ造作になっていることです。「自動車メーカーが作るとこうなるのか」と感心しました。 日本のキャンピングカービルダーは、誤解を恐れずに言うならば「手作り」が主流です。もちろん生産ライン方式を導入している会社もありますが、基本的にシートはシートメーカーから仕入れて取り付けるのが一般的です。 これについては、どちらが良い・悪いという話ではありません。ハンドメイドに近いビルダーと、工場で量産できる自動車メーカーの違いによるものです。 ご存じのとおり、自動車メーカーは月産何万台、何十万台という生産規模で生産販売を行います。それに比べて、キャラバン・マイルームの販売予定台数は発表されていませんが、大手のバンコンビルダーのそれを大きく上回るであろうことは、想像に難くありません。 しいてメリット・デメリットを整理するならば、以下のようになります。 〇メリット 1. 量産が可能になることで、材料調達や加工に凝ったことをしても1台当たりのコストを安く抑えることができる 2. 全国の日産車販売店で購入、メンテナンスができる。旅先で不調が発生しても、日産のディーラーかメンテナンス工場に駆け込める ●デメリット 1. 断熱処理がなされていない(キャラバン・マイルームの場合) 停泊中の快適性を大きく左右するボディーの断熱処理ですが、キャラバン・マイルームにはそれが施されていません。 2. FFヒーターや停泊時クーラーはオプションでも用意されていない キャンピングカービルダーなら今や当たり前に用意できるこれらの装備ですが、現段階ではオプションリストにもありません。なぜならば、自動車メーカーとしてそれらの社外製品を採用するためには、自動車メーカー独自の社内基準をクリアしているかどうか膨大なテストが必要になり、そう簡単には採用できない、という事情があるためです。 上記のメリット・デメリットをどう考えるか。なかなか難しいところです。何事も「ガラパゴス」と言われる日本、キャンピングカーについても、大量生産が主流の欧米とは違い、小規模であるかわりに融通が利きやすい中小規模の企業が主流です。 一般車両メーカーが参入するには、オプション設定に見られるような「事情」も多く、課題はまだまだありそうです。しかし、メリットの項目でご紹介したような魅力も多々あります。 価格は551万6500円(2WD・ガソリン・プレミアムGX)から。今後の動向に注目していきたい1台です。 ■著者プロフィール 渡部竜生 キャンピングカージャーナリスト 会社員からフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、セミナー講師、テレビ出演も多い。著書『キャンピングカーって本当にいいもんだよ!』(キクロス出版)。2輪も4輪も大好きで、飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹と妻ひとり。YouTubeチャンネル「キャンピングカー坊主めくり」開設。
朝日新聞社