泉房穂・前明石市長、兵庫県知事選は「大転換点」 「今後はネットでの戦い方が当落を決める」
11月17日に投票が行われた兵庫県知事選挙は、出直し選挙に臨んだ前知事の斎藤元彦氏が再選を果たした。この結果をどう見たか、泉房穂・前明石市長に聞いた。AERA 2024年12月2日号より。 【ランキング】こんなにもらえる!全国47都道府県知事の退職金一覧はこちら * * * 歴史の大転換点となる選挙だったと思います。「これからはネット選挙だ」と言われてきましたが、一部での動きでしかなかった。それがついにメインの戦い方にとって代わった。今後は国政含めあらゆる選挙戦でネットでの戦い方が当落を決めるようになると思います。 今回の知事選では世論が分断されました。斎藤元彦氏の知事としての資質を問う層と、斎藤氏はいじめられていた被害者だと同情する層の対立。新聞やテレビなどのオールドメディア対SNSの構図でもありました。 今回の選挙でオールドメディアは敗北しました。なぜか。それはいわゆる中間層が、インパクトのある「正義の戦い」という斎藤氏側の姿勢に強く傾倒したからです。NHKから国民を守る党党首の立花孝志氏は斎藤氏を支援するためだけに知事選に立候補し「オールドメディアを信じるな」と主張しました。斎藤氏はマスコミにはめられた、オールドメディアは不正義であり、こちらが正義だ、と。 ■民意こそ最も尊重 一方でオールドメディアは一貫して知事として問題ありという姿勢を維持しながらも、告示後は公平性のために報道を控えた。これによりルールなきSNS上では真偽が入り交じった情報があふれ、有権者、特に中間層ではこれが大きな判断材料になった。民衆はオールドメディアを信用していなかったという事実が明らかになった選挙でした。 私はこれまで斎藤氏を批判してきましたが、民意こそが最も尊重されるべきという立場は不変です。それゆえ今回の民意をふまえ、一面的であったことをテレビ番組で斎藤氏に対し謝罪しました。県民の立場からすれば孤立無援の改革者をみんなでつぶそうとしているように見える状況に無頓着だったことに対してです。明石市長として似たような状況にあった私はもっと多面的に兵庫県政の状況を理解するべきでした。 選挙は終わりましたが、百条委員会や第三者委員会は続きます。民意の尊重と事実の調査は矛盾することではなく、事実を明らかにすることが分断された民意の統合にも資することのように思います。 (構成/編集部・秦正理) ※AERA 2024年12月2日号
秦正理